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1298. 気候変動対策における自然に基づく解決策の貢献

1298. 気候変動対策における自然に基づく解決策の貢献
21世紀、人類は、史上前例のない、科学的予測をはるかに超えた気候変動の影響と生物多様性の喪失の深刻化に直面しています。こうした状況において、環境への影響を軽減するための戦略的、効果的、かつ持続可能なアプローチとして、自然に基づく解決策(Nature-based solutions:NbS)への関心が高まっています。Scientific Reports誌の論説は、気候変動対策におけるNbSの役割について論じています。
NbSは、炭素隔離、山火事等に対する防災、洪水対策、食料と水の安全保障など、社会環境的課題に対処するために、自然プロセスを賢明かつ持続的に活用すること(生態系/バイオームの機能と、そこから得られる財とサービスの供給を理解すること)を意味します。このアプローチは、生態系の修復と保全、生物多様性の持続可能な管理、さらには伝統的なコミュニティ(漁業共同体、先住民族など)が持つ自然システムの機能に関する知識の回復といった、相互に関連する多様な課題に配慮することで、生態系/バイオームと人間社会のレジリエンス(回復力)の促進を目指しています。
この文脈において、気候変動対策におけるNbSの重要な貢献は、緩和と適応を同時に促進する能力にあります。例えば、森林、マングローブ、在来牧草地、湿地は重要な炭素吸収源として機能し、大気中の炭素やその他の温室効果ガスを捕捉し、バイオマスや土壌に貯蔵します。同時に、これらの生態系は、海面上昇、洪水、干ばつ、地滑りなどの極端な気象現象に対する自然の障壁として機能し、真のグリーンインフラとして機能します。したがって、これらの環境の修復と保全への投資は費用対効果の高い戦略であり、非常に効率的な気候および社会のレジリエンスを促進します。さらに、NbSは、健全な生態学的前提に基づく収益性の高い経済活動に対し、補助金を通じた支援を可能にします。例えば、「従来型」(森林向け)や「ブルー」(マングローブやその他の沿岸生態系向け)の炭素クレジット活動などが挙げられます。
NbSは、持続可能な開発と気候変動対策を社会環境的公平性と整合させるための具体的な道筋を促進できるため、公共政策の策定を支援する強力な手段となります。パリ協定で策定された国別決定貢献(NDC)などの国家および国際政策にNbSを組み込むことは、野心的で持続可能な気候変動目標を達成するための鍵となります。
2025年11月にブラジルのベレン市で開催される国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第30回締約国会議(COP30)では、NbSを気候変動対策の中心に据える議論が行われる見込みです。COP30は"the COP of nature"とも呼ばれ、生物多様性アジェンダと気候アジェンダの統合、すなわち気候変動へのレジリエンスを高めるための手段として生物多様性の保護を推進することが、最も重要な議論の一つになることが見込まれています。
(参考文献)
da Silva Bezerra, D. Nature-based solutions to climate change. Sci Rep 15, 22095 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-05678-7
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)