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1186. 自然による人類への貢献

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1186. 自然による人類への貢献

 

近年の自然保護政策・管理フレームワークにおいては、自然による人類への貢献(NCP)が重視され、組み込まれるようになってきています。

生物多様性と生態系サービスのための政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、18種類のNCPを、調整(regulating)、物質的 (material)、非物質的(nonmaterial)、の3つに分類しています。

 

調整(regulating): 1:生息地の創出と維持, 2:受粉と種子拡散, 3:大気質の制御, 4:気候制御, 
5:海洋酸性化制御, 6:水量制御. 7:水質制御, 8:土壌形成, 9:災害制御, 10:有害生物の制御 

物質(material): 11:エネルギー, 12:食料・飼料, 13:材料・労働力, 14:薬用または遺伝資源

非物質(nonmaterial): 15:学習とインスピレーション, 16:身体的および心理的な経験, 17: アイデンティティの基盤

全体(All):18:以上の選択肢の維持

 

NCPアプローチは、生態系サービスの概念に基づき、人間と自然の関係の評価において、多様だが過小評価されている知識システム(伝統的な生態学的知識など)を含めることの重要性を強調しています。

 

一方、NCP科学において野生生物の役割は依然として過小評価されています。世界自然保護基金(WWF)がとりまとめた論文は、野生生物がサポートするNCPを人類への貢献と定義し(wildlife’s contributions to people (WCP))、野生生物が18のNCPカテゴリのうち12を直接サポートしていると整理しました。

このようなWCPに関する知識のギャップを放置し、政策や管理においてWCPを特定したり説明したりしないと、NCPと生物多様性の両方の目標が達成できなくなる可能性があります。論文は、WCPの理解を深め、保全の意思決定に統合するためには、野生生物のモニタリングとモデリングの進歩が必要であり、既存の研究における分類学的・地理的・文化的バイアスに対処する必要性を訴えました。

 

(参考文献)
Chaplin-Kramer, R., Miller, C.R., Dee, L.E. et al. Wildlife’s contributions to people. Nat. Rev. Biodivers. 1, 68–81 (2025). https://doi.org/10.1038/s44358-024-00006-9

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

 

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