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1261. 2024年、森林火災による熱帯原生林の喪失

1261. 2024年、森林火災による熱帯原生林の喪失
原生林は、人々の生活、炭素貯蔵、水供給、生物多様性などにとって極めて重要な森林生態系の一部です。2024年の原生林の消失だけで、3.1ギガトン(Gt)の温室効果ガスが排出され、インドの化石燃料使用による年間CO2排出量をわずかに上回る量に相当します。
世界資源研究所(WRI)が運営するGlobal Forest Watchによると、2024年、大規模な火災が主な原因で、670万ヘクタールもの熱帯原生林が失われました。これは少なくとも過去20年間で最大の面積で、パナマの国土面積にほぼ匹敵し、毎分サッカー場18面分の面積が消失したことに相当します。
2024年の熱帯原生林の火災による焼失面積は、2023年の5倍に上りました。一部の生態系では火災が自然発生することもありますが、熱帯林ではほぼ完全に人為的なものであり、農地開墾のために発生し、近隣の森林に制御不能なほどに広がっています。2024年は記録上最も暑い年となり、気候変動とエルニーニョ現象が主な原因で高温・乾燥した気候となり、より大規模で広範囲にわたる火災が発生しました。
ラテンアメリカはとくに大きな被害を受け、ブラジルとコロンビアでは、過去数年観測されてきた原生林火災の減少傾向が止まり、大規模な森林火災に見舞われました。とりわけ、昨年、ブラジルは70年ぶりの大規模かつ深刻な干ばつに見舞われ、高温と相まって、全国で前例のない規模の火災が発生しました。火災以外では、原生林の喪失は主に大豆や牛の飼育のための森林伐採によって引き起こされました。森林は火災後に回復する可能性がありますが、気候変動と森林の農業など他の土地利用への転換の相乗効果により、回復はより困難になり、将来の火災リスクが高まる可能性があります。
過去24年間、恒久的な農業のための森林伐採が熱帯原生林喪失の最大の要因となってきましたが、2024年には山火事がより大きな要因となり、原生林喪失原因のほぼ半分を占めました。それでも、火災とは無関係の原生林の喪失も、2023年から2024年の間に14%増加しました。これは主に、森林の農業への転換によるものです。
森林の減少は熱帯地方だけにとどまらず、カナダやロシアなどの北方地域では大規模な森林火災が発生しました。
2024年には明るい兆しもありました。インドネシアとマレーシアでは、原生林の減少が2023年よりも少なく、減少率も10年前を大きく下回っています。しかし、全体的な傾向は間違った方向に向かっています。 2021年、140か国以上の首脳がグラスゴー首脳宣言に署名し、2030年までに森林減少を食い止め、逆転させることを約束しました。しかし、この約束の達成に向けた軌道から大きく外れています。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)