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1123.気候変動に関連する森林火災由来温室効果ガス排出量の増加

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1123.気候変動に関連する森林火災由来温室効果ガス排出量の増加

 

人為的な気候変動により、森林火事はより大きく、より激しく、より一般的になりました。一方、森林火災には様々な要因がかかわっており、その要因分析はしばし困難です。

Science誌に公表された論文は、機械学習のアプローチを使用し、森林観測の観測が増加した「理由」と「場所」を特定しました。著者らは、さまざまな森林生態地域を特定し、それらを12の全球森林パイローム(pyromes: 仮訳-比較的均質な火災特徴を有する地域)に分類し、気候・人為的要因・植生に対する感度の違いを分析しました

その結果、気候変動の下で熱帯地域外(the extratropics)の森林火災の排出量が大幅に増加していることが明らかになりました。ユーラシアと北米の北方林にまたがる、あるパイロームでの火災排出量は、2001年から2023年の間にほぼ3倍に増加しました。この増加は、火災に適した気象条件の増加・土壌水分の減少・植生生産性の向上に関連していました。対照的に、熱帯パイロームは、一方で湿潤な熱帯林での森林破壊の減少、他方で農業やその他土地利用による乾燥熱帯林の断片化により、火災排出量の減少を示しました。全体として、森林火災の炭素排出量は調査期間中に全世界で60%増加し、地域としては熱帯以外の地域が最大の寄与をしています。

熱帯地域における火災の最大要因である人間の活動と比較して、熱帯地域外における火災の増加は気候要因の影響が強いことを浮き彫りにしています。森林火災の炭素排出量の増加は、火災の範囲の変化と火災の深刻度の変化(火災によって燃焼した単位面積あたりの炭素排出量で測定)の両方によって説明されました。気候が温暖化し、干ばつが頻発するようになるにつれて、より乾燥した可燃性の植物燃料のストックに影響を与えていると推計されます。

熱帯地域外の森林火災の排出量が増加する急激な傾向は、気候変動に対する森林カーボンストックの脆弱性が高まっており、気候変動対策において森林がカーボンシンクとして機能する能力が低下していることを示唆しています。これらのリスクを軽減するためには、温室効果ガス排出削減を目的とした効果的な森林経営と政策が不可欠です。この研究は、火災を管理し、森林生態系を保護するための戦略を策定する際に、火災制御における地域的な違いを考慮することの重要性を強調しています。


(参考文献)
Matthew W. Jones, Global rise in forest fire emissions linked to climate change in the extratropics, Science (2024). DOI: 10.1126/science.adl5889. www.science.org/doi/10.1126/science.adl5889 

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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