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1213. 気候変動による食用作物多様性への影響

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1213. 気候変動による食用作物多様性への影響

 

気候変動は世界の食料安全保障を脅かしており、既に、主要な食用作物の生産性や作付け地域の地理的シフトに影響を及ぼしています。将来の予測では、気温の上昇と降水パターンの変化により、特に低緯度地域では主要作物の収穫量が減少する一方、温帯地域の農業は平均気温の上昇の恩恵を受ける可能性があることが示されています。気候変動の影響に関する既存の研究は、主に世界の主要作物4種(米、トウモロコシ、小麦、大豆)または複数の作物を集計したものに焦点を当てていますが、予測される気候条件の急速な変化は、特に赤道付近の熱帯および亜熱帯地域で、作物生産の適応能力に課題をもたらす可能性があります。

Nature Food誌で発表された論文は、1.5~4°Cの地球温暖化シナリオの下、30種の主要な食用作物の気候的ニッチの地理的変化を予測し、潜在的な食用作物の多様性に与える影響を評価しました。分析の結果、熱帯・亜熱帯の低緯度地域では、2°Cの地球温暖化でも現在の生産量の10~31%相当が気候的ニッチ外に移行し、3°Cの温暖化ではニッチ外となる作物が20~48%に増加することが判明しました。同時に、世界の農地の52% (+2°C) と56% (+3°C) で潜在的な食用作物の多様性が減少すると予測されました。一方、中緯度から高緯度では、潜在的な多様性が増加し、気候変動適応の機会が生まれると推測されます。これらの結果は、地球温暖化のもと、緯度によって、世界の食料システムの適応能力と脆弱性に大きな違いがあることを浮き彫りにしています。

気候変動が食用作物の生産と将来の作物の多様性に及ぼす悪影響を軽減することは極めて重要です。気候変動適応策のより広い文脈において、気候に強い作物品種の選択、播種日・灌漑・施肥などの管理慣行の最適化、また、より持続可能な耕作地管理や食生活の変更を含む、気候変動緩和の実践を促進すべきです。

 

(参考文献)
Climate change threatens crop diversity at low latitudes, Nature Food (2025). DOI: 10.1038/s43016-025-01135-w. https://www.nature.com/articles/s43016-025-01135-w(link is external)

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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