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1064.グリーンアジアレポートシリーズ第2号「アジアにおける強靭な低炭素型稲生産システムに向けた間断かんがいの導入の促進:進展、課題、および可能性」を公表

1064.グリーンアジアレポートシリーズ第2号「アジアにおける強靭な低炭素型稲生産システムに向けた間断かんがいの導入の促進:進展、課題、および可能性」を公表
グリーンアジアレポートシリーズの第2号「アジアにおける強靭な低炭素型稲生産システムに向けた間断かんがいの導入の促進:進展、課題、および可能性」が公表されました。このシリーズはアジアモンスーン地域の行政官、研究者、普及担当、生産者、民間セクターを含む多様な関係者の参考となるよう、アジアモンスーン地域で共有できる基盤農業技術(scalable technologies)について紹介し、同地域の食料システムの変革に貢献することを目的としています。第2号は、稲作における節水・温室効果ガス(GHG)排出削減・収量安定等の効果が期待される間断かんがい技術を紹介します。
稲作を気候リスクに適応させ、同時にコメの栽培により生じるGHG排出量を削減するためには、水管理が極めて重要な役割を果たします。これは、低地でのかんがい稲作が干ばつの影響を受けやすいことと、かんがい地域での稲作が歴史的に湛水により行われており、それが嫌気性条件を生み出し、湛水された土壌で繁殖するメタン生成細菌によるCH4放出の促進を伴ってきたことによります。湛水の間隔を短くし湛水された状態を少なくすることでかんがい用水の利用水量を減らし、メタン生成細菌によるCH4 の産生と排出を大幅に抑制することができます。この水管理を実現する方法が間断かんがい技術です。
間断かんがい技術は、複数のパターンと複数の名称を持ちつつも共通原理に従っています。1回のみの落水や1回のみ土壌内部に空気が入り込む状態をつくる(エアレーション)場合と、複数の場合とに大別でき、前者は中干しのように1回だけ落水し、後者は複数回にわたり落水やエアレーションを行います。後者には、AWD (Alternate Wetting and Drying) やMiDi (Midseason Drainage followed by Intermittent Irrigation) があります。本レポートではこれらの技術の背景や歴史、その方法を比較するとともに、代表的な間断かんがい技術であるAWDについて、普及の現状や課題の分析、ならびにフィリピンやベトナムの取組み事例を紹介しています。あわせて今後アジアにおいて間断かんがい技術が普及・展開されるための対策を述べています。
レポートシリーズ https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia/report
みどりの食料システム国際情報センター https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia
アジアにおける強靭な低炭素型稲生産システムに向けた間断かんがいの導入の促進 ―進捗、課題、および可能性― https://doi.org/10.34556/gars-j.2
※ AWD (Alternate Wetting and Drying) :移植2週間後から開花前後1週間を除き断続的に落水と再湛水を行う。水田の水位をモニタリングし水田土壌表面下15cmまで水位が下がる前に再湛水することで収量減を回避する。
※ MiDi (Midseason Drainage followed by Intermittent Irrigation): 中干しをある程度の期間にわたり行い、その後短い間隔で湛水と落水を繰り返す。湛水のタイミングと時期は生育段階によって決まり、分げつ後期と幼穂形成期の間に1~2週間落水した後に間断かんがいを行う。
(文責:農村開発領域 渡辺守)