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925. 2023年の食料価格動向

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925. 2023年の食料価格動向

 

昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、食料サプライチェーン寸断の懸念を反映し、2022年前半に食料価格指標は史上最高値に達しました。国連とトルコの介入により2022年7月に締結された黒海穀物イニシアチブは、ウクライナ産作物の輸出を保障することで世界食料危機の回避に貢献してきましたが、3度にわたって延長されたのち、ロシアの合意離脱で2023年7月中旬に失効しました。 

国際的な食料価格指標は、史上最高値を記録した2022年に比べれば、2023年は相対的に低い傾向で推移してきました。12月18日に世界銀行がアップデートした食料安全保障情報によると、トウモロコシと小麦価格は昨年に比べ、28%・25%低い水準でした。対して、ロシア・ウクライナ戦争が始まった後に他の穀物価格が急騰した際、当初落ち着いていた国際コメ価格は、2023年半ばのインド政府による輸出規制や天候不順の生産状況への影響への懸念を受け高騰し、現在、世銀報告によると国際コメ価格は昨年比で36%高い値をとっています。

 

12月下旬現在、海上輸送航路の要所である紅海において、イエメンの武装組織フーシ派による船舶への攻撃が続いていると報道され、タンカー輸送の中止が原油価格の高騰をもたらすことが懸念されています。世界貿易の10-15%・世界の穀物貿易の8%・世界の海上原油取引の12%が紅海を経由しているとされ、40-50%の船舶がギリシャ・中国・日本・ドイツ所有とされます。化石燃料価格の上昇は、化学肥料の高騰を伴う傾向があり、今後、食料サプライチェーンに間接・直接的な影響を及ぼす可能性について注視する必要があります。 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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