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720. 最近の世界食料価格動向と食料安全保障
720. 最近の世界食料価格動向と食料安全保障
国連食糧農業機関(FAO) は、世界・地域・国レベルでの最新価格動向について、食料価格動向速報(Food Price Monitoring and Analysis: FPMA Bulletin Monthly Report)を公表し、とくに価格上昇が観察される国々の事情について詳細な情報を提供しています。
2023年2月公表のFPMAによると、2023年1月に小麦の国際価格が下落した要因として、オーストラリアやロシアからの2022年の産出高が予想よりも高く、短期的に世界の供給状況が改善したことが挙げられました。対照的に、強い需要を反映し、メイズ国際価格やコメ国際価格は上昇しました。2022年12月・2023年1月の国内価格動向に関しては、2022年のピークからは若干落ち着いてきているものの、とりわけ南部アフリカや西アフリカ地域において価格上昇が報告されました。食料アクセスへの制約は、アフリカの角を含むいくつかの地域で既に脆弱な社会・経済状況を悪化させることが予測されています。
2月13日にアップデートされた世界銀行のブログによると、食料の国内価格は世界中で高止まりしています。2022年10月から2023年1月にかけ、低所得国の8~9割においてインフレを記録し、幾つかの国では2桁に達しました。高所得国でも85.5%の国々がインフレを経験しています。
昨年の春に名目価格で史上最高値を記録した肥料価格は、ここのところ、天然ガス価格の下落や欧州における肥料工場の再開を受け、40%下落しています。にもかかわらず、価格水準は2年前の倍近い値を保っており、肥料の入手可能性に課題を突き付けていることは間違いありません。
世界の食料安全保障に影響を及ぼす懸念要因として、歴史的に高水準の商品価格、主食作物市場の逼迫、ウクライナ戦争が春の植え付けに与える影響、肥料市場の変動性、異常気象、世界経済の減速、食料価格インフレ、マクロ経済動向、の8つの要因が指摘されました。
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)