Pick Up

719. 2023年1月、世界の海氷は史上最低水準に

関連プログラム
情報

 

719. 2023年1月、世界の海氷は史上最低水準に

2月9日、世界気象機関(WMO)は、2023年1月に北極海・南極大陸の海氷を合わせた世界の海氷面積が史上最低水準を記録したと発表しました。

より具体的には、南極大陸の海氷は史上最も低く、北極海の海氷は史上3位の低い水準をとり、南半球・北半球合わせて史上最低の水準を記録しました。ただし専門家によると、今回の記録は必ずしも海氷減少のトレンドを決定づけるものではなく、気象に関連した変動の範囲内である可能性も否定できないということです。

いずれにせよ、海氷面積は気温と並ぶ気候変動の重要な指標であり、その気温は過去8年間史上最高水準の値をとっています。この1月は史上7番目に暖かい月で、新年に異常な高温に見舞われた欧州に関しては史上3番目の暖かい月でした。とくに北極では世界平均の2倍の速度で温暖化が進んでいるとされ、その結果、44年間にわたる衛星観測によっても北極海の海氷が近年急激に後退していることが確認されています。

こうした海氷融解が直ちに海面上昇につながるかどうかは、海氷・海洋・大気のフィードバックにも影響されるそうです。2月14日にNature Communications誌で公表された論文は、海氷・海洋・大気のフィードバックを考慮したモデル分析に基づき、産業革命以前に比べて温暖化が1.8℃を超える場合、海氷喪失により、大幅な海面上昇が加速する可能性を示しました。

気候変動に関する議論では、人為的な活動のせいで、地球が次第に不可逆性を伴うような大規模な変化を伴う転換点(tipping point-注:温室効果ガスなどの変化が少しずつ蓄積していった結果、ある時点を境に劇的な変化を起こす現象)に達しつつあるとされています。 氷床融解は、アマゾン森林破壊などとならび、とりわけ人為的な経済活動に起因する地球温暖化等によってティッピング・ポイントを超えてしまいそうな大規模なサブシステムの一つとされています。地球システムのティッピング・ポイントを回避するために、温室効果ガス排出を削減する政治・経済的なアクションがもとめられています。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

 

関連するページ