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664. シャルム・エル・シェイク実行計画

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664. シャルム・エル・シェイク実行計画

11月22日(火)、若手外国人農林水産研究者表彰式(通称:Japan Award)、および、JIRCAS国際シンポジウム2022「持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割」が無事ハイブリッド開催されました。後日、イベントの様子を報告させていただきます。

 

先週末まで国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催されていました。今日は会期延長による交渉の末とりまとめられたシャルム・エル・シェイク実行計画(the Sharm el-Sheikh Implementation Plan)の内容を紹介します。  

実行計画は、まず冒頭で、気候変動の対応には、持続的な生活様式、持続的な消費・生産パターンへの移行の必要性と、そうしたシフトを促進するための教育の役割の重要性を述べました。また、食料安全保障・飢餓撲滅達成を最優先事項とし、気候変動による負のインパクトをうける食料生産システムの脆弱性をただし、強靭性を強化する必要性を強調しました。

緩和については、世界の気温上昇を産業革命以前比で1.5℃に抑制するための締約国によるコミットメントを再確認したうえ、2030年までに2019年比で温室効果ガス排出を43%削減する努力に野心的に取り組むことに加え、温室効果ガス貯留に貢献しうる陸域・海洋エコシステムの保全・生物多様性保護の重要性に言及しています。

適応に関しては、気候変動への強靭性強化・適応能力向上のための抜本的なアプローチの適用を求め、最貧国・途上国に対するファンドの役割に期待しました。さらに、気候変動適応における水の重要性を強調し、水および水にまつわる河川流域・帯水層・湖沼といったエコシステムの保護・保全・修復の必要性を強調しました。COP成果文書において水が明言されたのは今回が初めてとのことだそうです。 

また、今会期の焦点でもあった「損失と損害」については、気候変動に起因する被害で途上国が債務超過に陥ることで持続可能な開発目標の達成が不可能になりかねないとし、途上国支援の基金創設に向けた合意を歓迎しました。

実行計画には、早期警戒システム・温室効果ガス濃度モニタリングの不備・ギャップに言及し、とくに途上国における気候観測システムの強化の必要性も盛り込まれました。アフリカの60%を含む世界の3分の1(おそらく、人口を指す)は早期警告システムや気候情報にアクセスを有していません。気候サービスや早期警告の質向上には、気候変動メカニズムの理解や気候リスク・転換点の監視が必要となることから、気候データ観測システムの整備強化が求められます。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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