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616. 国際的観測ネットワークによってイネの高温不稔の実態を解明

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616. 国際的観測ネットワークによってイネの高温不稔の実態を解明

温暖化の進行に伴い、水稲の開花時に穂が高温に曝されることで発生する高温不稔による水稲の生産性や品質の低下が懸念されています。しかし、どのような栽培環境で高温不稔が発生しやすいのかを解析した事例はありませんでした。このため、国際農研を含む研究グループは、世界の11か国にわたる国際的な水田微気観測ネットワーク(MINCERnet)を構築し、共通の測器(MINCER)を用いて観測を行い、温度や湿度の異なる様々な気候条件の水田の高温不稔、気温、水稲の穂の温度(穂温)等に関するデータを集積してきました。このデータを解析したところ、気温ではなく開花時間帯の穂温を指標とすることで、様々な栽培環境条件で高温不稔を統一的に評価できることを世界で初めて明らかにしました(Yoshimoto et al., 2022)。その結果、高温で湿潤な気候の地域では蒸散に伴う気化冷却効果が小さく穂温が高くなりやすいため、高温不稔リスクが高いと推定されました。本評価手法を活用することで、世界の高温不稔の予測精度を向上させ、また高温不稔に対して適切な対策を講じることが可能になると考えられます。

国際農研の辻本プロジェクトリーダーは、水稲生育期間中に35度以上の高温が多発するガーナ北部の水田を対象にして、ガーナ農業研究機関と共同でデータ収集し、この国際的観測ネットワークに貢献しました。さらに、ガーナの観測地点で収集したデータをより詳細に解析することで、水田での水管理の違いが水稲の群落温度の変化を介して、高温不稔および収量に及ぼす影響を明らかにし、論文(Tsujimoto et al., 2021)を2021年に発表しております。同成果は、2020年度の国際農研成果情報にも取り上げられています。

(参考文献)

Yasuhiro Tsujimoto, Abraham Fuseini, Baba I.Y. Inusah, Wilson Dogbe, Mayumi Yoshimoto, Minehiko Fukuoka, 2021. Different effects of water-saving management on canopy microclimate, spikelet sterility, and rice yield in the dry and wet seasons of the sub-humid tropics in northern Ghana. Field Crops Research, 260, 107978. https://doi.org/10.1016/j.fcr.2020.107978.

Mayumi Yoshimoto, Minehiko Fukuoka, Yasuhiro Tsujimoto, Tsutomu Matsui, Kazuhiro Kobayasi, Kazuki Saito, Pepijn A.J. van Oort, Baba I.Y. Inusah, Chenniappan Vijayalakshmi, Dhashnamurthi Vijayalakshmi, W.M.W. Weerakoon, L.C. Silva, Tin Tin Myint, Zar Chi Phyo, Xiaohai Tian, Huu-Sheng Lur, Chwen-Ming Yang, Lee Tarpley, Norvie L. Manigbas, Toshihiro Hasegawa (2022) Monitoring canopy micrometeorology in diverse climates to improve the prediction of heat-induced spikelet sterility in rice under climate change. Agricultural and Forest Meteorology, 316, 108860. http://doi.org/10.1016/j.agrformet.2022.108860

Press release
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niaes/154560.h…

国際農研2020年度成果情報「非湛水管理による水稲栽培が群落内気温の日変化と収量に及ぼす影響」
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_b12

 

(文責:社会科学領域・Africa Rice Center 齋藤和樹、生産環境・畜産領域 辻本泰弘)