カンボジアのイネいもち病菌レースは地域によってその出現頻度が異なる

要約

カンボジアのイネいもち病菌菌系は判別品種への反応から3つグル―プに分けられ、グループの出現頻度は、メコン川流域とトンレサップ湖周辺、さらにアンコールワットで知られるシェムリアップ県と他の地域では異なっている。

背景・ねらい

JIRCASの国際いもち病ネットワーク研究では、防除技術開発の基礎となる判別システムの開発と世界各地のいもち病菌菌系の病原性の評価、多様性の解析を進めている。しかしメコン川流域の東南アジア諸国におけるいもち病菌レースの分化や多様性に関する研究は少なく、特にカンボジアにおいてはその病気そのもの発生や被害の程度も把握されていない。

成果の内容・特徴

  1. 合計122のいもち病菌菌系は、感受性品種のLTHと23種の抵抗性遺伝子を対象とした判別品種群(一遺伝子系統群またはLTHの準同質遺伝子系統)の反応パターンをもとに3つのグループ(I、 IIa、IIb)に分類される。
  2. グループIは、IIaに比べて、特にPiiPi3Pi5(t)、Pik-sPi12(t)、Pitaに対して病原性を示す菌系頻度が増し、Pi20(t)に対しては減る。
  3. グループIIbは、PibPitPiaPiz-tPi19(t)に対して病原性の菌系頻度が増す。
  4. またグループIIaは、判別品種群に最も広い病原性を示し、広くカンボジア国内に分布し、特にメコン川流域に高頻度で現れる。
  5. グループIはシェムリアップ県に特に多く、他のトンレサップ湖周辺の地域ではIIbの頻度が高い。
  6. カンボジアにおけるいもち病菌菌系は地域よって異なる病原性をもったものが分布しているが、IIaをもとにIおよびIIbが分化したものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  1. カンボジアにおけるいもち病菌菌系の分布・分化についての初めての情報である。
  2. 国際判別品種の反応に基づく詳細な病原性研究は、カンボジアのみならず、メコン川周辺のいもち病害が問題となっている国々における、いもち病菌レースの影響や相互の関係を理解するうえでも重要な情報となる。
  3. カンボジア南部、南ベトナムとの国境地域についてはいもち病菌菌系の採取が行われておらず、解析を継続する必要がある。

具体的データ

  1. 図1 イネいもち病菌菌系の判別品種に対する反応による分類

    図1 イネいもち病菌菌系の判別品種に対する反応による分類
    判別品種に対して、病原性菌系の頻度は変異し、クラスターグループごとで頻度の違いに特徴がある。

  2. 図2 いもち病菌菌系グループの地理的分布

    図2 いもち病菌菌系グループの地理的分布

所属

国際農研 熱帯・島嶼研究拠点

国際農研 生物資源・利用領域

分類

研究B

国名

カンボジア

研究プロジェクト

[イネ創生] 環境共生型稲作技術の創生

プログラム名

食料安定生産

予算区分

交付金 » イネ創生

研究期間

2013年度(2011-2015年度)

研究担当者

福田 善通 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )

科研費研究者番号: 40399374
見える化ID: 001798

古賀 郁美 ( 生物資源・利用領域 )

Ung T. ( カンボジア農業開発研究所 )

Sathya K. ( カンボジア農業開発研究所 )

田中 顕子 ( 鳥取大学 )

小出 陽平 ( 日本学術振興会 )

科研費研究者番号: 70712008

小林 伸哉 ( 農研機構 次世代作物開発研究センター )

科研費研究者番号: 70252799

Yanada H. ( カンボジア農業開発研究所 )

長生 ( 農業生物資源研究所 )

科研費研究者番号: 90391557

ほか
発表論文等

Fukuta, Y. et al. (2014) JARQ, 48:155 - 166

https://doi.org/10.6090/jarq.48.155

日本語PDF

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English PDF

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2013_B05_A4_en.pdf230.56 KB

ポスターPDF

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