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570. 気候変動とグリーンウォーター

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570. 気候変動とグリーンウォーター

Earth's Future誌に公表された論文は、2050年までに世界の農地面積の80%以上で、農業用水の不足が悪化するとの見通しを報告しました。

この研究は、農業用水不足指数を用い、将来の気候変動下における農業用水不足を推計しています。この指数は、川・湖・地下の水源から灌漑を通じて農地にもたらされるブルーウォーターと、降雨により直接農地にもたらされ土壌中に貯留されるグリーンウォーターを同時に扱い、灌漑農地と天水農地の農業用水不足を統合的に示すことができます。

推計の結果、気候変動により世界の農地面積の80%以上で水不足が進行することが示されています。この水不足の深刻化は、水利用可能量の減少と作物の要水量の増加に起因しています。また、農地の16%において、グリーンウォーター利用可能量の変化が、水利用可能量の変化に大きな影響を与えていることが示されました。

この研究結果は、水不足に関する理解を深めるとともに、将来の温暖化における水不足の影響を緩和するために、農地におけるグリーンウォーターの利用を向上させる必要性を示すとされています。

グリーンウォーターを増やす手段の一つに、小規模なため池の設置があります。小規模なため池は、表流水を貯留し池の近くで水を利用することから、ブルーウォーターを使う大規模灌漑システムと比較し、グリーンウォーター増加の高い効果が見込まれています。

国際農研では、アジア、アフリカでため池の設置、管理、水利用などに着目した研究を行っており、その成果を論文やマニュアルにまとめています。

https://www.youtube.com/watch?v=gMoW3ewmWrw

https://www.jircas.go.jp/ja/publication/manual_guideline_57

https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2007_11


(参考文献)
Xingcai Liu et al, Global Agricultural Water Scarcity Assessment Incorporating Blue and Green Water Availability Under Future Climate Change, Earth's Future (2022). DOI: 10.1029/2021EF002567

Wisser, Frolking et al. The significance of local water resources captured in small reservoirs for crop production – A global-scale analysis. Journal of Hydrology (2010). DOI:10.1016/j.jhydrol.2009.07.032

(文責:農村開発領域 岡直子)

 

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