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566. 海氷溶解と転換点

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566. 海氷溶解と転換点

昨年8月20日、グリーンランドの氷山山頂にて、8月14-16日にかけ、1950年に観測が始まって以来初めて降雨が観測されたことが報道されていました。 最近公表された研究でも、グリーンランドや北極海の氷河融解が加速し、氷塊が不安定化していることを報告しています。 海氷は、極地の気候システムの中心的な構成要素です。近年、アイス・アルベド・フィードバック (Ice-albedo feedback)*を通じて地球温暖化が増幅することを予測する研究報告により、海氷への注目が集まっています。1978年より衛星での観測を開始したNASAは、2022年6月までのデータも更新し、北極海における海氷面積の急速な減少を報告しています。 

グリーンランドや北極海の海氷融解は、永久凍土の融解、南極氷床の融解、アマゾン森林破壊、とならび、気候変動議論において、地球が次第に不可逆性を伴うような大規模な変化を伴う転換点(tipping point-注:温室効果ガスなどの変化が少しずつ蓄積していった結果、ある時点を境に劇的な変化を起こす現象)をもたらしうる重大な生態系システム攪乱の一つとされています。 

プラネタリーバウンダリー論提唱者であるJohan Rockström博士は、転換点に達することで、異常気象といった気候の緊急事態にとどまらず、ドミノ倒し的に不測の事態が制御不可能になる地球の緊急事態(Planetary Emergency)に陥る危機を指摘し、科学に基づき温室効果ガス排出を抑制していくためのアクションと社会変化が喫緊に必要であることを訴えました。

 
アイス・アルベド・フィードバック (Ice-albedo feedback) とは、正のフィードバックを伴う気候プロセスである。氷帽・氷河・海氷などの面積が変化し、その地域のアルベド(地面が太陽光を反射する割合)が増減することによって引き起こされ、最初に加えられた変動を増強する方向に働く。例えば、温暖化が起きると、氷が溶けてアルベドの低い地表面が露出し、加速度的な気温の上昇が招かれる。 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)