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424. 世界食料価格動向-2011年7月来の高値に

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424. 世界食料価格動向-2011年7月来の高値に

国連食糧農業機関(FAO)は、11月4日、世界食料価格動向を公表、世界食料価格が2011年7月以来の高値をつけていると報告しました。

10月、FAOの食料価格指標は、9月から3%上昇し、平均133.2ポイントをつけました。この背景には、カナダ・ロシア・アメリカ等の主要輸出国での生産落ち込みと市場逼迫を受けた小麦価格の5%上昇や、パームオイル・大豆・ヒマワリ等の食用油価格の上昇を反映しているとされます。

2021年の穀物生産は史上最高値が予測されていますが、2020・2021年の備蓄水準は逼迫が見込まれています。世界の穀物生産は27.93憶トンと予測される一方、世界人口増の伸びに合わせた小麦需要の増加予測と、トウモロコシの飼料・工業利用の増加等の要因を受け、穀物利用は28.12憶トンと予測されています。こうした要因を反映し、まだ安全圏にあるとはいえ、備蓄水準は前年に比べ29.4%から28.5%に若干減ると予測されています。

食料価格の高騰は、食料輸入国の食料安全保障に大きなインパクトをもたらします。2008年には、世界的な穀物価格が急騰し、穀物輸入に依存する開発途上地域において買い占めや買い溜め騒動が起こり、政情不安が悪化するという事態も生じました。当時の国際的なパニックの背景には、穀物生産国における旱魃、原油価格の上昇を受けたバイオ燃料ブームの過熱、政策金利引き下げによる世界の投機マネーが穀物市場に流入、これら要因に加え、アジアにおける食料需要変化(とくに食肉需要の増加) 、農業研究予算の削減と収量改善の停滞、など長期的な要因も相まって、劇的な世界的食料価格の高騰に繋がったとされています。 

思い返せば、2020年3月に新型コロナウイルス感染症がパンデミックと宣言され、世界中で移動規制等が敷かれると、フードサプライチェーン寸断への影響から、食料価格高騰危機への懸念が高まりました。COVID-19危機に関しては、国際機関が穀物備蓄水準・生産見通しに関する情報提供と国際協調の呼びかけを迅速に行ったことも功を奏して、世界穀物市場レベルでの危機は回避されたものの、COVID-19はグローバル・フードサプライチェーンの流通面における潜在的な脆弱性を浮かび上がらせる契機となりました。 

世界の食料安全保障を維持するためには、極めて密接につながったグローバルフードシステムにおいて、食料需給不均衡をもたらしかねない短期・中長期の動向に関する情報収集・分析を行い、国際連携のための準備を怠らないことが肝要です。最近では、原油価格高騰による燃料や肥料価格の上昇が食料生産や物流コストに影響を与えています。中長期的には、開発途上国の人口増と経済発展による食需要の質・量変化、気候変動・極端現象による主要輸出国での生産事情、農林水産業における気候変動適応・緩和策の実施、など、世界食料需給を取り巻く環境はますます複雑化しているといえます。国際貿易に食料安全保障を大きく依存する日本にとっても、イノベーションを通じて国際農林水産業の持続的な発展を通じて世界食料市場の安定に貢献することが求められます。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)