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924. 世界の気候 2011-2020:加速の10年

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924. 世界の気候 2011-2020:加速の10年

 

今年も残すところ10日となり、これまでの取り組みを改めて見つめ直す時期になりました。そこで、世界気象機関も2020年までの10年間の気候課題に関する報告書、「世界の気候 2011-2020:加速の10年 (The Global Climate 2011-2020: A decade of acceleration)」を公表、気候変動の実態に改めて警鐘を鳴らしました。 報告書は気温上昇、氷河・氷床の融解、海洋温暖化と酸性化、温室効果ガスの増加に触れ、その変化の程度について述べています。

 

観測史上最も暖かかった10年

2011-2020年は、1990 年以降の他の連続した10年と比較して最も暖かかった結果となりました。多くの国が記録的高温に見舞われ、特に強いエルニーニョ現象が発生した2016 年と2020年では並んで観測史上最高気温を記録しました。深刻な気温上昇が懸念される北極地域では、この10年の平均気温が1981年-2010年の平均気温より2℃以上も高かった結果となっています。

 

氷河・氷床が消失し海面上昇が加速した10年

氷河は年間平均1メートル消失しました。温暖化で降雪は溶けてしまい蓄積されず、補われない氷河は減るばかりです。赤道付近・パプア・インドネシアでは今後10年で、アフリカのルヴェンゾリ山脈・ケニア山は2030年までに、キリマンジャロでは2040年までに全てが消失すると推測されています。グリーンランドと南極大陸の氷床も融解が進んでいます。今回の10年とそれまでの10年で比較して氷床減少は約75%多かったとされ、淡水資源の損失が懸念されています。従て海面水位も上昇、年間4.5mm上がったとされています。

 

海洋温暖化と海洋酸性化が進んだ10年

過去20年で特に加速する海洋温暖化ですが海洋2000メートル深さにおける温暖化率は2020年に過去最高を記録し、今なお水温は上昇し続けています。
加えて、CO2蓄積も進み、酸化の影響で海洋生物が殻や骨格の構築ができないという厳しい生育環境に晒されています。

 

大気中の温室効果ガスが増え続けた10 年間

CO2濃度上昇は1991-2000 年までの 10 年平均で361.7 ppm、2001以降では380.3 ppm、2011以降では402.0 ppm継続的に上昇しています。産業革命前までの1万年間、凡そ280ppmの一定水準で保たれていた大気中の温室効果ガス濃度は、2020年に当時の50%も増加して413.2ppmを記録しています。メタンガス濃度も、産業革命まで730ppb(ppb = parts per billion)だったのが、1991-2000 年までの10年平均で1761.4 ppb、2001以降で1792.5 ppb、2011以降では1850.2 ppbとこれも右肩上がりとなっています。主に化石燃料の燃焼、森林破壊、土地利用の変化によって引き起こされている温室効果ガス排出ですが、明確な削減効果が示されない限り歯止めがかかる見通しはありません。

 

最後に、報告書はオゾン層の回復や早期警告システム(early warning system)導入による極端現象時の死傷者数の減少について述べ評価しましたが、この先も気候変動対策に向けてさらなる努力と投資が必要なことを改めて訴えました。


(参考文献)
WMO. The Global Climate 2011-2020, A decade of accelerating climate change, WMO-No. 1338 https://library.wmo.int/records/item/68585-the-global-climate-2011-2020


(情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)


 

 

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