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393. 迫りくる水の危機に備えよ

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393.  迫りくる水の危機に備えよ

2021年10月5日、真鍋叔郎博士が気象物理学でノーベル賞を受賞され、二酸化炭素の大気濃度上昇が気温上昇をもたらすメカニズムを大気・海洋モデルを構築して予測した業績が注目されています。実際に、気候変動による洪水・干ばつなどの極端現象の頻度上昇や、気温上昇による世界・地域レベルでの降雨パターンの変化は、農期の変化を通じ、食料安全保障および人々の福祉に大きな影響を及ぼすようになっています。

おりしも、10月5日、世界気象機関(WMO)は、「水」にフォーカスを当てた気象サービス白書2021年を公表、持続可能な開発目標、気候変動適応、災害危機緩和に向けた政策整備・投資の緊急性を訴えました。 報告書の主要なメッセージを視覚的に提示したサイトも同時に公開されています。 以下、要点をまとめます。

  • 水は人間開発の前提条件であるにもかかわらず、淡水として利用可能なのは地球上の水の0.5%に過ぎない。
  • 過去20年間、地上部の水喪失は毎年1㎝というペースで進行している。
  • 23億人(世界人口78憶人の3割)が水へのアクセスが限られる国に居住しており、そのうち7.33憶人はとりわけ水へのアクセスが保証されていない国に住んでいる。
  • 1970年から2019年の間、水に関連する気象・気候災害によって、206万人の人命と3.6兆ドルの経済利益が失われた。この間、災害の55%と経済喪失の31%が洪水絡みの被害で、ほとんどがアジアで起こっており、とくに2000年以降洪水関係の災害はそれ以前の20年間に比べ134%増えている。1970年から2019年の間、干ばつは70万人の人命を奪ったが、その多くはアフリカであり、2000年来、干ばつの頻度と期間はその前の20年間に比べて29%増加した。
  • 統合水資源管理(IWRM:Integrated Water Resources Management)の適用が長期的な社会・経済・環境目標の達成にとって不可欠となる。

世界銀行によると、世界の多くの地域において、淡水の70%以上が農業に使用されていると報告されています。2050年までに90憶人の世界人口を養うためには農業生産を50%増加させるために農業による水利用を15%増加させることが予測されています。気候変動に備え、これまで以上に農業の水利用を効率化していくためのイノベーションが必要とされています。 

 

参考文献

World Meteorological Organization (WMO) 2021 State of Climate Services (WMO-No. 1278)  https://library.wmo.int/doc_num.php?explnum_id=10815 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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