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313. ブルキナファソ産リン鉱石を活用した「肥料の地産地消」で稲作の生産性向上に貢献

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ブルキナファソを含む西アフリカでは、厳しい気象条件や肥沃度の低い土壌など、多くの要因により作物の収量が制限されており、食料不足が慢性化しています。先進諸国においては肥料の過剰施用が水圏の汚染や温室効果ガスの発生など、様々な問題を引き起こしているのに対し、アフリカの多くの国では、施肥量が少ないために生産性が低く、その結果として、耕作地の拡大につながっています。

ブルキナファソで流通している輸入NPK[窒素(N)、リン(P)、カリ(K)]肥料100 kgの価格は平均的な農民の労働賃金20日分に相当し、他の地域と比較しても大変高価であることも、施肥量が増加しない要因となっています。特にリンの不足が深刻なため、施肥による補給が必要です。

一方ブルキナファソには1億トンを超えるリン資源が眠っていますが、不純物を多く含み反応性が低いことから低品位に分類されており、その大部分は未利用です。そこで2017年から開始されたSATREPSブルキナファソプロジェクトでは、低品位リン鉱石の可溶性を高めるために、アルカリ塩とともに900℃以上の高温で焼成する焼成法と硫酸を用いて反応させる部分酸性化法の2つの手法を適用することでブルキナファソ国産肥料の開発を進めてきました。

2021年に発表された2報の論文では、稲作を対象として実際の農家圃場において焼成リン肥料と部分酸性化リン肥料の有効性が検証されました。PLOS ONEに掲載された「Site-specific responses of lowland rice to acidulated and calcined phosphate rock fertilizers in the Center-West region of Burkina Faso」 では焼成リン肥料と部分酸性化リン肥料の両者が有効であること、また施肥効果は土壌の性質や水環境によって変化することが示されました。この結果を受けて、Soil Science and Plant Nutritionに掲載された「Optimal P fertilization using low-grade phosphate rock-derived fertilizer for rice cultivation under different ground-water conditions in the Central Plateau of Burkina Faso」 では特に水環境に注目した解析が行われました。その結果、最適なリン肥料の種類と施用量は低湿地からの距離(地下水位)によって異なることが明らかとなり、最適管理を適用した場合には十分な収益を得ることができることが明らかとなりました。

これらの結果は、ブルキナファソでの国産リン肥料の普及と施肥技術の改善に寄与するものと考えられます。これまで輸入肥料に頼ってきたアフリカの国々において国産肥料を普及し、地産地消への転換をすることで、アフリカ全土での安定的な食料自給に貢献すると考えられます。

参考文献

Monrawee Fukuda, Dohan M. Soma, Shinya Iwasaki, Satoshi Nakamura, Takashi Kanda, Korodjouma Ouattara & Fujio Nagumo (2021). Site-specific responses of lowland rice to
acidulated and calcined phosphate rock fertilizers in the Center-West region of Burkina Faso. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0250240

Shinya Iwasaki, Monrawee Fukuda, Kenta Ikazaki, Satoshi Nakamura, Korodjouma Ouattara & Fujio Nagumo (2021) Optimal P fertilization using low-grade phosphate rock-derived fertilizer for rice cultivation under different ground-water conditions in the Central Plateau of Burkina Faso. https://doi.org/10.1080/00380768.2021.1932584

(文責:生産環境・畜産領域 岩崎真也)

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