ブルキナファソ産リン鉱石は水田への直接施用において高い肥効を示す

要約

ブルキナファソ産リン鉱石は水田への直接施用により、イネ収量を向上する。またリン酸あたり同量施用では化学肥料とほぼ同程度の収量を期待できる。

背景・ねらい

サブサハラ・アフリカ(SSA)稲作では、低土壌肥沃度環境が収量を制限する大きな要因となっており、中でも土壌中リン酸含量の低さが問題として挙げられている。また、一般に化学肥料は高価であるため、化学肥料を代替できる安価なリン酸資源が求められている。一方でSSAにはリン鉱床が多く確認されており、産出するリン鉱石を直接施用することが可能であるが、産出されるリン鉱石の多くは溶解度が低く、一般的に畑作物において直接施用による効果は低いとされている。しかし、水稲作においては土壌環境が畑作とは異なり、リン鉱石直接施用が有用である可能性があり、域内で産出されるリン鉱石直接施用の有効性が確認出来れば、当該地域における安価なリン酸資源として活用できる。そこで、SSA稲作の代表的農業生態系である、サバンナ帯および赤道森林帯の稲作圃場において、ブルキナファソ産リン鉱石(BPR)の直接施用効果を検証する。

成果の内容・特徴

  1. ガーナ国内のサバンナ帯および赤道森林帯の二つの農業生態系において、稲作農家圃場を各2地点設定し、BPRの直接施用効果を評価するための試験を実施する(表1)。
  2. 供試したBPRはKodjari産出の堆積性リン鉱石で、微粉砕されたもの(およそ70メッシュ)である。
  3. BPR施用区では、リン酸施用量に応じて稲収量が増加することから(図1)、BPRの直接施用が稲作において有効である。また、稲植物によるリン吸収量と稲収量との間には正の相関があり(図2)、施用したリン酸が有効に働いたと考えられる。
  4. リン酸として同量施用した化学肥料(重過リン酸石灰 : TSP)区の収量とBPR施用区の収量はほぼ同程度であることから、BPRはTSPを代替できるリン資材であるといえる。

成果の活用面・留意点

  1. ブルキナファソにはリン酸として約1億トンの埋蔵量が推定されており、類似の未利用リン鉱石は周辺各国の埋蔵量を合わせるとリン酸として約6億トンの埋蔵量があるとされている。
  2. BPRは既存研究により、溶解度が低く直接施用には適さないとされていたが、この成果は直接施用によっても活用可能であることを示すものである。
  3. BPRは今のところ調査地であるガーナ国内での流通は認められないものの、ブルキナファソにおいては、リン化学肥料の約1/4の価格で購入出来ることから、サブサハラ・アフリカ稲作における利活用が期待できる。
  4. 稲作におけるBPR直接施用の残効は、地点間の差異が認められる。残効の高い地点では、連続施用の80~116%の収量が得られ、高い残効が期待できる(未発表データ)。
  5. 本成果は2年間の試験による成果であり、気候条件等により効果が変動する可能性がある。
  6. BPR直接施用は、土壌のリン酸吸収係数が非常に高い場合、効果が認められない場合が報告されている(Fukuda. et al. (2013))。

具体的データ

  1. 表1 リン鉱石直接施用試験における各処理区の施肥量(kg ha-1)

    表1 リン鉱石直接施用試験における各処理区の施肥量(kg ha-1)

    † サバンナ帯では、完全無施用区(Zero)を設定し、赤道森林帯では、TSPを推奨量(60 kg 2O5 / ha) 施用する試験区を設定した(TSP-rec)
    *ブルキナファソ産リン鉱石(P2O5 26%, Ca 32%, Si 6%)
    **重過リン酸石灰

  2. 図1 ガーナ稲作におけるブルキナファソ産リン鉱石の直接施用が稲収量に及ぼす影響

    図1 ガーナ稲作におけるブルキナファソ産リン鉱石の直接施用が稲収量に及ぼす影響
    各データは3反復の平均値であり、エラーバーは標準誤差で示した。なお、各地点の試験開始時の土壌pHを以下に示す。Site 1; 5.60, Site 2: 5.83, Site 3: 4.53, Site 4: 5.70。

  3. 図2 ブルキナファソ産リン鉱石直接施用によるリン吸収量と稲収量の関係

    図2 ブルキナファソ産リン鉱石直接施用によるリン吸収量と稲収量の関係
    リン吸収量は、イネ止葉中のリン酸濃度を乾式灰化法により定量し、地上部乾物重を乗じて算出した。

Affiliation

国際農研 生産環境・畜産領域

分類

研究A

研究プロジェクト
プログラム名

食料安定生産

予算区分

受託 » 農林水産省大臣官房・肥沃度資源

研究期間

2013年度(2009~2013年度)

研究担当者

中村 智史 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 00749921

福田 モンラウィー ( 生産環境・畜産領域 )

飛田 ( 生産環境・畜産領域 )

科研費研究者番号: 30450266

ほか
発表論文等

Nakamura, S.et al. (2013) African Journal of Agricultural Research, 8 : 1779-1789

https://doi.org/10.5897/AJAR12.1830

Nakamura, S. et al. (2013) JARQ, 47(4): 353-363

https://doi.org/10.6090/jarq.47.353

Potential Utilization of Local Phosphate Rocks to Enhance Rice Production in Sub-Saharan Africa

日本語PDF

2013_B03_A3_ja.pdf288.2 KB

2013_B03_A4_ja.pdf400.06 KB

English PDF

2013_B03_A3_en.pdf139.4 KB

2013_B03_A4_en.pdf685.78 KB

ポスターPDF

2013_B03_poster.pdf379.56 KB

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