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270. 途上国におけるより効率的な飼料生産技術の開発に向けて― サイレージ・発酵TMR調製マニュアル

 

近年、畜産業は温室効果ガス排出源としてみなされ、とりわけウシは家畜からの温室排出の78%を占めるとされています。 このため、家畜からの動物性食品の消費を減らすこと、経営形態を改善することが気候変動対策として議論されています。他方、開発途上国の小規模農業システムにおいては、家畜は肉・乳といった動物性タンパク質の供給源であるだけでなく、エコシステムサービス・所得・資産・保険的な役割も果たしています。例えば、欧州では商業的家畜生産からの過剰な堆肥が環境問題を引き起こしていますが、途上国では堆肥は土壌肥沃度を維持し作物生産性の向上に重要な役割を果たしています。商業的システムではブラジルのような大豆生産国で加工された飼料が地球の反対側に輸出されるというフットプリントを伴っていますが、途上国では飼料生産はローカルに行われています。 途上国におけるより効率的な飼料生産技術の開発、耕畜連携システムの改善に関する研究が必要とされています。

アフリカの大部分を含む熱帯・亜熱帯の半乾燥地域では、乾季に飼料が著しく不足するため、家畜の体重や乳牛の乳量が低下する等、家畜生産が大きく阻害されます。飼料不足を改善するためには、家畜生産が行われる現地で、利用されることの少ない作物残渣等を飼料資源として活用する方法が考えられます。これは雨期の終わりや乾季の初めに多くある作物残渣等を、サイレージや発酵TMR(混合飼料)に調製することで、栄養成分を保持しながら乾季中も貯蔵し、利用するものです。このように年間を通じた飼料供給を可能にすることで畜産を振興させ、それを通じた地域の人々の豊かな生活などにも寄与できるでしょう。

しかし、こうした地域、特に途上国での制約の多い条件下で適用できる技術は確立されていないのが実状です。そこで、国際農研は、モザンビーク南部を対象として行った「アフリカ食料」プロジェクトで得られた畜産研究の成果に基づいて、現地で活動する研究者や生産者が、サイレージと発酵TMRの調製法を理解し活用できる情報を提供するため、本マニュアルを作成しました。 


参考文献

「サイレージ・発酵TMR -調製マニュアル-」
英語:
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/manual_guideline/SilageManual_en
ポルトガル語:
https://www.jircas.go.jp/ja/publication/manual_guideline/SilageManual_pt

(文責:生産環境・畜産領域 蔡義民)