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90. 報告書「2020年世界の食料安全保障と栄養の現状」:健康的で経済的に入手可能な食事の実現に向けたフードシステムの変革

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今年7月、「世界の食料安全保障と栄養の現状(The State of Food Security and Nutrition in the World Report: SOFI)」の2020年版が発行されました。SOFIはもともと国際連合食糧農業機関(FAO)の旗艦報告書の1つであり、5つの国連機関(FAO, IFAD, UNICEF, WFP, WHO)が共同で制作する形をとっています。今年の副題は「健康的で経済的に入手可能な食事の実現に向けたフードシステムの変革(Transforming food systems for affordable healthy diets)」です。

SDGsが開始されてから5年経ち、目標2(飢餓の撲滅)の進捗状況を評価する時期になってきました。本報告書では、中国を含む多くの国の最新データを反映し、より正確な評価を行っています。また、最新の世界経済見通しに沿って、新型コロナウイルス・パンデミックが食料安全保障と栄養に与える影響予測も試みています。

現在世界中で6億9000万人(世界人口の8.9%)が飢餓に苦しんでいます。世界の飢餓人口はしばらく減少傾向にありましたが、2014年から緩やかな増加に転じ、その増加傾向は続いています。このままではSDGsの目標2の達成は難しいでしょう。さらに、新型コロナウイルスによって、特に弱い立場の人たちを中心に、8300万人から1億3200万人の人々が栄養不足に陥るとも予測されています。ちなみに飢餓人口の分布も変化しつつあり、現在アジア地域が世界の半数以上を占めていますが、2030年にはアフリカ地域が半数以上になると予測されています。

また、食料不安は飢餓以上の課題であり、世界で約20億人が中程度・重度の食料不安を経験しています。さらに、飢餓や食料不安だけではなく、過体重などのさまざまな形の栄養不良にも向き合わなければなりません。子どもの発育阻害、低出生体重の割合、完全母乳育児は改善しつつあるとはいえ、国際栄養目標(2025年期限)やSDGs(2030年期限)に対する進捗としては遅れをとっており、また大人の肥満は全ての地域において増加しているなど、多くの問題が残っています。

SDGsの目標2を達成するためには、人々が十分な食事を食べていること、そしてその食事は栄養価が高く、入手可能なものであることが必要です。今年の報告書では、初めて、食事へのアクセスだけでなく、「健康的な(多様な食品群を含み、食品群内の多様性にも富む)食事」へのアクセスにも注目しました。

健康的な食事は平均して、必要なエネルギー量を満たすためだけの食事の5倍高価だとされ、それを満たすためには国際的な貧困ラインや多くの国の平均食料支出額を超えてしまいいます。健康的な食事にありつけない人は現在世界中で少なくとも30億人いると見積もられました。

さらに、食事には直接的なコストに加え、健康や気候変動に関わる「隠れたコスト」もあります。現在の消費パターンを続けた場合に比べると、健康的で環境にも配慮した食事にシフトした場合、健康に関するコストは97%削減、温室効果ガス排出の社会的コストは41-74%削減されると試算されました。

参考文献

Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO), International Fund for Agricultural Development (IFAD), United Nations Children’s Fund (UNICEF), World Food Programme (WFP) & World Health Organization (WHO). 2020. The State of Food Security and Nutrition in the World 2020. Transforming food systems for affordable healthy diets. Rome, FAO.

http://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html

Accessed on July 17

(文責:研究戦略室 白鳥佐紀子)