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290. 世界食料政策報告書2021:新型コロナウイルスパンデミック後のフードシステム変革

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4月、国際食糧政策研究所(IFPRI)から2021年世界食料政策報告書(Global food policy report)が出版されました。副題は新型コロナウイルスパンデミック後のフードシステム変革についてです。食料政策の専門家たちが、特に貧困層や脆弱層に対してのパンデミックや政策対応の影響を調査することで、健康的で強靭で効率的で持続可能で包括的なフードシステム変革に向けて、データに基づくエビデンスを示し政策提言を行っています。

新型コロナウイルスのパンデミックは、ローカル、国、世界全体でフードシステムに多大な影響を与え、持続可能な開発目標(SDGs)達成までの道のりをさらに遠のかせました。しかしながら、パンデミックに対する世界の対応から得られた教訓は、将来のショックにどう対処するか、どうフードシステムを変革させるか、という点で有効活用することができるとも言えます。

もともと健康的な食事ができていない人が世界で30億人いましたが、パンデミックでさらに1割増えました。子どもの消耗症は昨年1年だけで670万人増えた可能性があります。パンデミックの影響は不均一であり、特に農村部・都市部両方の貧しい世帯、インフォーマルセクターで働く人、移民労働者、女性、難民、国内避難民の食料安全保障や健康・栄養を脅かしました。社会的な保護政策は11億人に届き、量としてはパンデミック前の倍、カバー率は240%増加しましたが、継続的でなかったり量が不足していたりジェンダーに配慮していないものであったりと、さまざまな制約もありました。

フードサプライチェーンのイノベーションは今に始まったことではありませんが、組織的にもデジタル的にもパンデミック中に急加速しました。システムの強靭化のためには、ショックの頻度と大きさを抑制する、ショックを予測する早期警告システムへ投資する、ショックを吸収する力を構築する、の3つが必要だと提言しています。また報告書では地域別の影響についてもまとめられています。


2021年は、食料システム、気候、栄養に関する世界的なサミット(国連食料システムサミット、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)、東京栄養サミット(N4G))が開催され、世界が協働して変革を起こすために大変重要な年となります。喫緊で重要な問題であるフードシステム変革を進める貴重な機会と言えるでしょう。


参考文献
International Food Policy Research Institute (IFPRI). 2021. 2021 Global food policy report: Transforming food systems after COVID-19. Washington, DC: International Food Policy Research Institute (IFPRI). https://doi.org/10.2499/9780896293991
(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)
 

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