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235. 21世紀の森林におけるカーボン変動のグローバル・マップ

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気候変動対策へ向け、世界は脱炭素化―カーボン・ニュートラル―のための具体的な対策を模索しています。カーボン・ニュートラルは、温室効果ガス排出の削減だけでは達成できず、海洋・土壌・森林による炭素の吸収・貯留が前提となります。その中でも気候変動緩和策における森林管理の役割は非常に大きく、二酸化炭素を吸収し、酸素を生み出すことで、地球上の生命を支えています。様々な関係者の活動がもたらす空間的なインパクトを把握するためのマッピング・ツール、データモニタリングが不可欠です。

2021年1月、Nature Climate Change誌に、21世紀の森林におけるカーボン変動のグローバル・マップに関する論文が公表されました。従来、地域毎に異なるデータ、手法、仮説に基づく森林カーボンモニタリングシステムが混在し、空間をまたいだ一貫した評価を難しくしてきました。世界資源研究所(WRI)やNASA研究者を含む国際研究者チームは、地上および衛星観測等のデータを統合し、2001-2019年の毎年の森林関連温室効果ガス排出・貯留トレンドを30mの解像度でマッピングしました。推計によると、世界の森林は、総炭素除去 (−15.6 ± 49 GtCO2e yr−1) と 森林破壊その他攪乱要因による総排出(8.1 ± 2.5 GtCO2e yr−1)の差から、純炭素吸収源(−7.6 ± 49 GtCO2e yr−1)になっています。これはアメリカが一年間に排出するカーボンの1.5倍に相当するそうです。

こうした地理空間的なモニタリングフレームワークは、気候変動政策における優先順位の設定や森林関連の気候変動緩和ゴールの進展を記録する上で、地域レベルかつ世界レベルでの一貫性をもって、整合性・透明性を担保することが期待されます。この手法は、様々な森林類型ごとの貢献を識別することも可能であり、熱帯林が、他のどんな森林類型に比べても、カーボンを吸収し、かつ森林破壊・森林劣化によりカーボンを排出することで、世界レベルでのカーボン変動に寄与していることを示しました。著者らは、気候変動緩和の観点から、熱帯林の減少を食い止める重要性を訴えました。マップは、ウェブ上のアプリケーションGlobal Forest Watchにおいても見ることができます。

国際農研は、東南アジアの有用樹種を高付加価値化する熱帯林育成・保全技術開発(価値化林業)に取り組んでいます。 この取り組みはカーボン吸収源としての熱帯林の機能向上にもつながります。熱帯林は有用な木材樹種の宝庫ですが、その複雑な生態系を理解したうえで林業を行わなければ、森林の復元力と健康を維持しつつ優良な木材を生産し続けることはできません。熱帯地域の森林管理や林業に貢献するため、国際農研は1991年以来、マレーシア森林研究所(FRIM)と共同研究を実施してきました。この度、長年にわたる共同研究によって得られた成果の中から、フタバガキ林に関する研究成果を取りまとめた特集号「マレーシアのフタバガキ林の生態と造林」がJournal of Tropical Forest Science (JTFS)から発行されました。

この特集号(Vol.28, No.5, Special Issue)では、マレーシア半島部の丘陵フタバガキ林に焦点を当て、特に重要な商業木材樹種であるShorea curtisiiを中心に、東南アジアの熱帯雨林に優占するフタバガキ科樹木の分布と生態、森林更新、成長と収穫に関する9編の論文を掲載しています。国際農研とFRIMとの長期にわたる協力で蓄積された森林生態系への観察と洞察が結実したこれらの新たな知見は、熱帯地域におけるより良い木材生産と森林管理に大きく貢献するものです。


参考文献
Nancy L. Harris et al. Global maps of twenty-first century forest carbon fluxes, Nature Climate Change (2021). DOI: 10.1038/s41558-020-00976-6

(文責:林業領域 岡裕泰、谷尚樹、 研究戦略室 飯山みゆき)