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193. フードシステムにおけるシステム思考の必要性

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2020年11月にNature Food誌で公表された論説では、フードシステムの直面する複雑な問題解決に取り掛かる上で、システム思考の重要性を訴えました。

研究対象としての食料・フードは間違いなく異分野連携を必要としており、人類・地球の健康を核として、農業・貿易・自然界・気候変動・人間の行動といった要因が遠隔相関していますが、これらの関係は十分に考慮されてきませんでした。生産の持続性に配慮せずに栄養的に理想的な食生活を定義したり、あるいは単にカロリー供給増加を目指した農業システム・デザインは、実現性の薄い単眼的な結果を生み出してきました。

SDGsは、飢餓撲滅・貧困解消・成長・環境というゴールを同時に追求する上で、研究者を異分野連携研究へといざなってきました。

実際にはツールやデータには限界があり、分析に全ての要素を含むことは不可能です。例えば、栄養に特化した介入モデルの制約を追加することで、土地利用や作物生産の計算はより複雑になり、グローバルに一貫性のあるデータセットでは詳細な評価・分析には粗すぎる結果しか期待できません。技術採択、社会的行動、価格の弾力性、食料のアベイラビリティ・アクセス・利用に影響を与える多くの決定要因に関して、不確実性は不可避です。一方で、計算力は大幅に向上してきましたし、経験は蓄積され、編纂されたデータベースも大きくなっています。これらは現実世界の複雑な問題をより正確で包括的に取り扱い、分析の深さを妥協することなく範囲を広げることも可能にしてきました。

研究手法やフレームワークは、我々が問題を分析するときの視角を提供するものです。どのように構築されて応用されるかが、解決方法の探索範囲を決定します。システム思考から逸脱してしまうリスクは過小評価されるべきではありません。

国際農研は、食料栄養バランス・プロジェクトにおいて、気候変動などの不確実性条件における微量栄養素需給予測シナリオ分析を行っています。

 

参考文献

Systems thinking, systems doing. Nat Food 1, 659 (2020). https://doi.org/10.1038/s43016-020-00190-9

Furuya J (2020) Development of an Economic Model for Evaluation of Climate Change in the Long-run for International Agriculture: EMELIA JIRCAS Working Report No.89 https://www.jircas.go.jp/sites/default/files/publication/jircas_working…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)