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104. Science: パンデミック予防のための生態学と経済学

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2020年7月24日、Science誌にて、「パンデミック予防のための生態学と経済学」論考が公表されました。

100年の間に毎年2つの新しいウイルスが自然界のホストから人間に襲い掛かっています。MERS、SARS、2009年のH1N1、HIV、そしてCOVID-19は、これらのダメージの大きさを物語っています。人獣共通感染ウイルスは、多くの場合、人間が生きた霊長類、コウモリやその他野生動物(またはその肉)を取り扱う場合、あるいはニワトリや豚などの家畜から間接的に拡散します。人類と病気の貯蔵庫である野生の関係が密度を増すことで、ウイルスが世界的に拡散するリスクは増大しています。本論文では、かつてないスピードでの熱帯林喪失・分断化と野生動物貿易による感染症の監視・予防コストについて評価します。分析によると、これら予防的措置に伴うコストは、これら病原菌が発現してからの対応策にともなう経済・死亡コストよりもずっと少なくすむはずです。

著者らが提案するアクションの総コストは毎年220-310憶ドルのコストがかかります。森林破壊の減少は温室効果ガス排出の削減による社会利益も含め毎年40憶ドルの利益をもたらすことを踏まえれば、防止の純コストは毎年180-270憶ドルとなります。対するCOVID-19は、パンデミックの莫大な費用を示しました。2020年、世界のGDPは少なくとも5兆ドル失われるとされています。これらのコストは死亡率の上昇、医療システム崩壊による死亡、社会距離による活動の喪失によるコストを含めていないものです。10年間の防止コストの現在費用はCOVID-19パンデミックのコストの2%に過ぎないと推計は示しています。

この一方で、Reutersは、2020年8月1日、ブラジルの公式データによると、世界最大の熱帯雨林であるアマゾンにおける火事が去年の7月より28%増加、環境保全史上最悪であった昨年の記録を繰り返しかねないと懸念が報じられています。NASAによると、2020年の熱帯北大西洋における平均よりも高い表海面温度がアマゾン南部からの湿気をひきつけ、結果として乾燥状態となり、農地拡大のための人為的な火入れによって、ランドスケープが発火しやすく制御不能になりやすい状況が作り出されているとしています。

参考文献

Andrew P. Dobson, et al. Ecology and economics for pandemic prevention Science  24 Jul 2020: Vol. 369, Issue 6502, pp. 379-381 DOI: 10.1126/science.abc3189

Reuters Fires in Brazil's Amazon rainforest surge in July, worst in recent days. Jake Spring.  AUGUST 1, 2020 https://www.reuters.com/article/us-brazil-environment/fires-in-brazils-…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)