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1530. 「ハイドロロジカル・ウィップラッシュ」:気候変動下で進む乾湿の急激化

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1530. 「ハイドロロジカル・ウィップラッシュ」:気候変動下で進む乾湿の急激化

 

気候変動の進行に伴い、干ばつと洪水が短期間で入れ替わる極端な現象が各地で報告されています。このような急激な乾湿の振れは「ハイドロロジカル・ウィップラッシュ(hydrologic whiplash)」と呼ばれ、従来は個別に扱われてきた水関連災害を統合的に捉える概念として注目されています。PNAS誌に掲載された論説は、この概念と近年の動向を紹介しています。

同論説では、例えば2022年末の米国カリフォルニアにおいて、深刻な干ばつ状態から短期間のうちに大気河川の連続的な流入による洪水へと急転した事例が紹介されています。このように、極端な乾燥状態と湿潤状態が短期間で入れ替わる現象は、気候変動の進行に伴い、その頻度や強度が増している可能性が指摘されています。

その背景として、気温上昇により大気に保持される水蒸気量が増加することが挙げられます。暖かい大気はより多くの水蒸気を保持できるため、湿潤時には降水が強まり、一方で乾燥時には蒸発散が促進されることで乾燥が強まります。この結果、降水や水文条件の変動幅が拡大し、極端な乾湿の振れが生じやすくなると説明されています。

さらに、近年の研究動向として、こうした急激な乾湿変動が過去数十年と比較して増加傾向にあること、特に数週間から数か月といった比較的短い時間スケールでの変動が顕著であることが示されています。

この現象は水資源管理に新たな課題をもたらします。例えば、貯水池の水位が短期間で大きく変動する可能性があるため、従来の運用では対応が難しくなる場合があります。また、既存の予測モデルは過去の気候条件を前提として構築されていることから、こうした急激な変動を十分に再現できない可能性も指摘されています。

加えて、影響は水資源にとどまりません。同一地域において干ばつと洪水が連続して発生することで、農業生産の不安定化、インフラ被害の増加、生態系への影響など、経済的・社会的負担が増幅される可能性があります。

同論説は、極端現象そのものだけでなく、それらの「移行過程」に着目する重要性を指摘しています。これを踏まえると、今後は急激な乾湿変動を前提とした予測手法の高度化や、柔軟な水資源管理の導入が重要になると考えられます。

また、気候変動の影響は平均値の変化にとどまらず、極端さや変動性の増大として現れる点にも留意が必要です。「ハイドロロジカル・ウィップラッシュ」という概念は、こうした新たなリスクの構造を理解する上で有用であり、今後の気候変動適応策の検討において重要な視点を提供するものと考えられます。

 

(参考文献)
Amy McDermott, Driven by climate change, sudden swings between wet and dry create “hydrologic whiplash”. Proceedings of the National Academy of Sciences (2026). https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2617960123


(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

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