Pick Up

1482. 2019~2024年に進んだメタン増加の要因

関連プログラム
情報

 

1482. 2019~2024年に進んだメタン増加の要因

 

メタン(CH₄)は、20年という短い時間軸で見ると二酸化炭素の約80倍の温室効果を持つ、非常に強力な温室効果ガスです。メタンの主な自然起源は湿地であり、人為起源としては畜産、石油・ガス施設、埋立地、石炭採掘、稲作、下水処理などが挙げられます。一方、大気中メタンの約90%は、対流圏に存在するOHラジカルとの反応によって除去されており、その他に塩素ラジカルによる酸化、成層圏での酸化、土壌への吸収といった小さな吸収過程も存在します。

150か国以上が参加する「グローバル・メタン・プレッジ」では、2020年比で2030年までに人為起源メタン排出を30%削減することが掲げられています。しかし、大気中のメタン濃度は、2007~2019年に再び増加傾向に転じた後、2020年と2021年に急増し、その高い増加率は2024年まで続いています。これらの変化が、排出源の変化によるものなのか、あるいは大気中での分解過程の変化によるものなのかは明確になっていません。

2019年から2024年にかけて、大気中のメタン濃度は年平均約0.7%の割合で増加しました。Science Advances誌で掲載された研究では、統合された衛星観測データを用いて、このメタン増加の要因を分析しました。

解析の結果、この期間のメタン濃度上昇は三つの要因が重なって生じていることが示されました。最も大きな要因は、2019年時点の排出量と吸収量の条件に基づく「定常状態への緩やかな移行」で、全体の約59%を占めていました。これに加えて、排出量の増加が約25%、メタンを分解する役割を持つ対流圏のOHラジカル濃度の低下が約16%寄与していました。

世界全体のメタン排出量は、2019年に年間571テラグラムでしたが、2021年に601テラグラムまで増加し、その後は減少して2024年には575テラグラム前後に戻りました。2021年のメタン増加のピークは、主に排出量の増加によるものでした。一方、OHラジカル濃度は2019年から2022年にかけて約2%低下し、その後2024年に向けて回復しています。このOH濃度の回復が、2022年以降のメタン増加率の低下に大きく寄与していました。

排出源別に見ると、2019年から2024年にかけて、石油・ガス部門と稲作からの排出は減少しましたが、畜産および廃棄物処理部門からの排出は増加していました。この結果、部門間で相殺が起き、全体としては大きな削減には至っていません。

地域別では、東アフリカが最も大きな排出増加を示し、次いで南米とヨーロッパが続きました。東アフリカでは、湿地および畜産由来の排出増加が示唆されています。一方、米国およびカナダでは、この期間に有意な排出増加傾向は見られませんでした。

本研究は、近年のメタン増加が排出量の変化だけでなく、大気中での分解過程の変動も含めた複合的な要因によって生じていることを明らかにしています。

 

(参考文献)
He M et al. (2026) Attributing 2019–2024 methane growth using TROPOMI satellite observations, Science Advances, 10 Apr 2026, Vol 12, Issue 15.

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

 

関連するページ