CO2濃度増加にともなう水田からのメタン発生量増加

要約

CO2濃度増加水稲バイオマスを増加させると同時に、水田からのメタン発生量を増加させる。

背景・ねらい

世界的な水田耕作面積の拡大にともなう水田からのメタン発生量の増加は、地球温暖化の原因のひとつであると考えられている。一方、近年の大気中二酸化炭素(CO2)濃度の増加は、水田における炭素循環量を増加させるため、さらにメタン発生量を増大させることが考えられる。本研究では、6基のチャンバー施設(内容積:20.0m3)を用いて、現在のCO2濃度条件下(350ppm)と高CO2濃度条件下(650 ppm)で水稲を栽培し、大気CO2濃度増加が水田からのメタン発生に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. 水稲栽培期間におけるメタン発生量は、350および650ppm CO2濃度において、それぞれ18.4および21.8 g/m2(1998年)、5.6および13.7 g/m2(1999年)であり、高CO2処理により水田からのメタン発生量は有意(P<0.05)に増加する(図1および2)。
  2. メタン発生に対するCO2濃度効果は両年とも栽培後期において顕著である(図1および2)。
  3. 高CO2濃度条件では、水稲の地上部バイオマス量は有意(P<0.05)に増加する。また、茎数およびもみ収量も増加傾向(P=0.05で有意差なし)を示す(表1)。
  4. 多量の稲わらを施用した1998年では、栽培前期から稲わら起源のメタン発生が顕著に見られ、その結果、栽培期間全体でのメタン発生に対するCO2濃度効果は小さい(図1および2)。
  5. 以上の結果は、大気中のCO2濃度増加が水稲のバイオマス量を増加させると同時に、水田からのメタン発生量を増加させることを示唆する。

成果の活用面・留意点

地球環境変動の正のフィードバック効果として、将来における水田からのメタン発生量の推定に活用される。

具体的データ

  1.  

    図1, 図2 現在のCO2濃度条件下でのメタンフラックスの季節変化
  2.  

    表1 高CO2濃度処理が水田からのメタン発生と水稲収量に及ぼす影響
Affiliation

国際農研 環境資源部

分類

研究

予算区分
経常 科・戦略基礎〔FACE〕
研究課題

水田からのメタン発生量の評価とその抑制技術に関する研究

研究期間

平成12年度(9~12年度)

研究担当者

八木 一行 ( 環境資源部 )

( 環境資源部 )

酒井 英光 ( 農業環境技術研究所 )

小林 和彦 ( 農業環境技術研究所 )

ほか
発表論文等

Yagi, K., Li, Z., Sakai, H., and Kobayashi, K. (2000): Effect of elevated CO2 on methane emission from a Japanese rice paddy. Proceedings of the FACE 2000 Conference, p. 40.

日本語PDF

2000_06_A3_ja.pdf682.46 KB

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