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1114. 2020年から2022年のメタン急増の要因は湿潤熱帯地方の湿潤状態に起因

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1114. 2020年から2022年のメタン急増の要因は湿潤熱帯地方の湿潤状態に起因

 

大気中のメタンガスの増加は、2020年から2022年にかけて過去最高の増加を記録するなど、過去10年間で加速しています。PNAS誌で公表された論文(link is external)は、湿潤熱帯地方の湿潤状態が2020年から2022年のメタン急増を引き起こしたことを示しました。

メタンの主な発生源には、化石燃料、家畜、水田稲作、廃水、湿地、野火などがあります。一方、ヒドロキシルラジカル(OH)による対流圏酸化が消失の要因になります。2007年以降のメタン上昇の説明として、石油・ガス排出量の増加、家畜・湿地排出量の増加、OH濃度の低下などが挙げられています。
衛星観測の逆解析によると、10年単位でみた場合、メタン排出は湿潤熱帯地域で進行してきた一方、北部中緯度では減少していることを示しています。2020年から2022年にかけての急増は、主に赤道アジア(43%)とアフリカ(30%)の排出量によるもので、ラニーニャ現象と関連した大規模な湿潤状態に起因すると考えています。対照的に、米国、ロシア、中国などの主要な人為的排出国からの排出量は、2010年から2022年にかけて比較的横ばいです。対流圏のOH(主要なメタン吸収源)の濃度は、2010年から2022年にかけて長期的な傾向を示していませんが、2020年から2022年にかけて減少し、メタンの急増に寄与しました。

アフリカは、2020年から2022年のメタン急増の30%を占めており、家畜と稲作の急速な拡大による可能性があります。排出量の増加が最も大きい地域(東アフリカ、コンゴ民主共和国、ナイジェリア)は、アフリカの湿地メタン発生源の78%を占めています。 

赤道アジアは、2020年から2022年にかけてのメタン排出量急増の43%を占めています。湿地は、この地域のメタン排出量の50〜65%を占めています。2020年と2021年、赤道アジアでは過去10年間で最も高い降水量を記録し、壊滅的な洪水が発生しました。赤道アジアにおける2010-2019年から2020-2022年にかけての人為的排出量の増加に最も貢献したのは稲作であり、次いで廃棄物、石油・ガス、家畜となっています。

メタン排出トレンドにおいて湿潤熱帯地方がとびぬけていることは、大気中のメタン削減による気候変動緩和に貢献する道筋を見出すうえで、重要な意味を持っています。

 

(参考文献)
Zhen Qu et al, Inverse modeling of 2010–2022 satellite observations shows that inundation of the wet tropics drove the 2020–2022 methane surge, Proceedings of the National Academy of Sciences (2024). https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2402730121(link is external)


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

 

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