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1522. 間接温室効果ガスの気候政策への統合の必要性―Science誌論考の紹介―
1522. 間接温室効果ガスの気候政策への統合の必要性―Science誌論考の紹介―
現在の国際的な気候変動対策は、主として京都議定書で対象とされた温室効果ガス(GHGs)を中心に設計されています。一方で、大気中の化学反応を通じて温暖化に影響を及ぼす「間接温室効果ガス(Indirect Greenhouse Gases: iGHGs)」については、現行の枠組みにおいて十分に考慮されていないと指摘されています。
Science誌に掲載された論考(Ocko, 2026)では、こうしたiGHGsの重要性が改めて提示されています。同論考において著者らは、一酸化炭素(CO)や非メタン揮発性有機化合物(NMVOCs)などが大気化学反応を通じて温暖化に寄与していることを示し、これらを気候政策や排出量インベントリに組み込む必要性を提言しています。また、農業や土地利用を含む多様な排出源に由来するiGHGsについて、その気候影響をより適切に評価し、政策に反映すべきであるとしています。
同論考によれば、産業革命前から現在までの気温上昇のうち約15%(約0.3℃)が、直接的な温室効果ガス以外の要因に起因し、そのうち約80%をiGHGsが占めているとされています。
また、主要なiGHGsとして、一酸化炭素(CO)、非メタン揮発性有機化合物(NMVOCs)、窒素酸化物(NOx)、水素(H₂)の4種類が取り上げられています。これらは直接的な温室効果を持つわけではありませんが、対流圏オゾン(O₃)の生成、メタン(CH₄)の寿命変化、二酸化炭素(CO₂)の二次的生成などを通じて、気候に影響を及ぼすと整理されています。
さらに著者らは、COおよびNMVOCsによる温暖化寄与の合計が約0.25℃に達し得るとし、これは京都議定書対象ガスである一酸化二窒素(N₂O)の寄与(約0.11℃)を上回る可能性があると指摘しています。また、CO、NMVOCs、NOxはいずれも対流圏オゾン生成の主要な前駆物質であり、COやNMVOCsはメタンの分解を抑制してその寿命を延長させる作用を持つとされています。加えて、水素エネルギー利用の拡大に伴い、漏出管理が不十分な場合には追加的な温暖化影響が生じ得る点にも言及されています。
加えて、対流圏オゾンは温暖化への寄与にとどまらず、大気汚染物質として健康影響や農作物収量の低下とも関連することから、同論考では気候政策と大気環境政策の統合的な検討の必要性が強調されています。
以上を踏まえ、著者らは、政策立案、排出量算定(インベントリ)、研究の各分野においてiGHGsを気候枠組みに組み込むことを提言しています。具体的には、国別削減目標(NDC)や排出量報告への反映、大気汚染対策と気候変動対策の連携強化、農業・土地利用を含む多様な排出源の評価および排出量把握の高度化などが挙げられています。
本論考は、新たな観測データに基づく研究ではなく、既存研究やIPCC評価結果を踏まえた政策提言型の整理です。また、iGHGsの気候影響は地域、季節、大気化学条件に依存して大きく変動するため、不確実性が残されている点も指摘されています。今後は、観測・モデルの高度化や排出量算定手法の改善を通じて、より精緻な評価が必要であると指摘されています。
(参考文献)
Ilissa Ocko, Integrating indirect greenhouse gases into climate frameworks, Science (2026). https://www.science.org/doi/10.1126/science.aee5790
(文責:戦略統括室 飯山みゆき)