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1496. 2025年、熱帯雨林減少は一時的に改善 -それでも世界で広がる森林火災と地域ごとの課題

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1496. 2025年、熱帯雨林減少は一時的に改善 -それでも世界で広がる森林火災と地域ごとの課題

 

世界資源研究所(WRI)は、2025年の森林減少に関する最新分析(Global Forest Review)を公表しました。同分析によれば、2025年の熱帯地域における原生林の減少は前年と比べて減少しましたが、森林火災の拡大や地域ごとの構造的課題が引き続き深刻であることが示されています。

WRIの分析によると、2025年の熱帯原生林の消失面積は前年と比べて36%減少しました。2024年は極端な森林火災により記録的な損失が発生していたため、その反動も影響したと考えられます。ただし、2025年においても約430万ヘクタールの原生林が失われており、これは1分あたりサッカー場11面分以上に相当する規模です。長期的には、森林減少は依然として高い水準にあります。

WRIは、森林が生物多様性の保全、水資源の供給、炭素の吸収・貯蔵、食料や医薬資源の提供など、私たちの暮らしを支える多面的な機能を担っている点を強調しています。そのうえで、原生林の減少が気候変動対策や生態系保全に深刻な影響を与えると指摘しています。

国別にみると、2025年はブラジルなど一部の国で森林減少が抑制され、全体の改善に寄与しました。WRIによれば、ブラジルでは原生林の減少が前年より大幅に減少しています。ただし、森林面積が広大であるため、国別では依然として最大の森林損失国となっています。一方で、コロンビア、インドネシア、マレーシアでは比較的安定した傾向が見られたものの、ボリビアやコンゴ民主共和国などでは高い森林損失が続いています。

またWRIは、アフリカやアジアの一部地域では、商業的農業の拡大に加え、貧困や人口増加を背景とした自給的農業や薪炭材への依存などが森林減少の主要因となっており、ガバナンスや経済状況と密接に結びついた構造的課題が存在すると分析しています。

森林減少の主因としては、引き続き農地拡大が挙げられています。WRIによると、大豆、牛肉、パーム油といった商業的生産に加え、地域によっては小規模農業も森林消失の要因になっています。さらに、近年は森林火災の影響が拡大しており、過去3年間における火災由来の森林損失は、20年前と比べて2倍以上に増加しているとされています。

加えてWRIは、北米やヨーロッパなどの温帯・寒帯地域においても、2025年に大規模な森林火災が発生した点を指摘しています。特にカナダでは広範囲で森林が焼失し、人々の生活や健康への影響も報告されています。森林火災は年ごとの気象条件に大きく左右されるほか、衛星観測の制約により実態把握が難しいという課題もあるとされています。

さらにWRIは、「2030年までに森林減少を停止し、回復に転じさせる」という国際目標に対して、2025年の森林減少は依然として大幅に上回っていると指摘し、警鐘を鳴らしています。森林減少が継続すれば、不可逆的な変化(転換点)に近づくリスクが高まり、気候変動や生物多様性の損失が加速するおそれがあるとされています。

以上の分析から、森林減少は政策的な介入により一定程度抑制し得る一方で、気候変動の進行や資源需要の増加が新たな圧力として作用していることが読み取れます。特に森林火災の増加は、従来の土地利用要因に加えて、気候要因が森林減少に与える影響の大きさを示しています。

また、地域ごとに森林減少の要因が大きく異なることから、一律の対策ではなく、各地域の社会経済的背景を踏まえた対応が求められます。森林保全の成否は、今後数年間の政策、経済活動、国際的な協調の在り方に大きく左右されると考えられます。

 

(参考文献)
“Tropical Rainforest Loss Slowed in 2025, but Fire Is a Growing Threat to Forests Worldwide .” Global Forest Review, updated April 29, 2026. Washington, DC: World Resources Institute. Available online at https://research.wri.org/gfr/latest-analysis-deforestation-trends.

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

 

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