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1487.極端高温が農食料システムを限界へ追い込む

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1487.極端高温が農食料システムを限界へ追い込む

 

国連食糧農業機関(FAO)と世界気象機関(WMO)は2026年4月22日、極端高温(エクストリーム・ヒート)が農業従事者の健康や生計、生産性に深刻な影響を及ぼし、世界の農食料システムを危機的状況へ追い込んでいるとする共同報告書を発表しました。過去半世紀で極端高温の頻度・強度・継続期間はいずれも急増しており、今後そのリスクはさらに高まると警告しています。

今回発表された報告書は、極端高温が作物、家畜、漁業、森林といった農業の全分野に直接・間接の影響を与える「リスク増幅要因」であることを明らかにしています。

報告書によると、極端高温による農業への影響はすでに世界各地で顕在化しています。トウモロコシや小麦といった主要穀物は、気温が1℃上昇するごとにそれぞれ約7.5%、6.0%の収量減少が確認されています。将来的には、さらに1℃気温が上昇するごとに、最大で追加10%の減収が見込まれています。

家畜分野でも影響は深刻で、高排出シナリオの下では、2100年までに世界の家畜の約半数が危険な暑熱条件にさらされる可能性があり、年間損失額は400億米ドル近くに達すると試算されています。一方、低排出シナリオでは、こうした影響を約3分の2軽減できるとされています。

海洋分野では、海洋熱波により魚類の大量死や生息域の移動がすでに発生しています。果樹やナッツ、天然林も高温と山火事リスクの増大により生産性が低下しています。さらに、農業労働者自身も強い暑熱ストレスにさらされており、健康被害や労働生産性の低下が深刻な問題となっています。これらの損失は、減産を補うための農地拡大を招き、温室効果ガス排出を増やすという負のフィードバックループを生み出していると指摘されています。

報告書は、すでに起きている変化、そして今後避けられない影響に備えるため、適応策の強化が不可欠であるとしています。特に、熱帯・亜熱帯の脆弱な地域では、その必要性がより切迫しています。極端高温は一定程度予測可能であるため、気候サービスや早期警戒システムを、先取り的行動と結びつけることが重要な機会とされています。同時に、平均気温がパリ協定の1.5℃目標を超えつつある現状では、適応だけでなく、国際協調による野心的な温室効果ガス削減が、農食料システムの将来を守る唯一の持続的解決策であると結論づけています。

 

(参考文献)
FAO and WMO. 2026. Extreme heat and agriculture – FAO–WMO joint report. Rome and Geneva. https://doi.org/10.4060/cd9394en

(文責:戦略統括室 飯山みゆき)

 

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