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1466.グリーンアジアレポートシリーズ第4号 ”Local Biochar Use for Sustainable Agriculture in Asia”の改訂版を公表
1466.グリーンアジアレポートシリーズ第4号 ”Local Biochar Use for Sustainable Agriculture in Asia”の改訂版を公表
グリーンアジアレポートシリーズNo. 4 “Local Biochar Use for Sustainable Agriculture in Asia”の改訂版が公開されました。このシリーズはアジアモンスーン地域の行政官、研究者、普及関係者、生産者、民間セクターを含む多様な人々の参考となるよう、アジアモンスーン地域で共有できる基盤農業技術(scalable technologies)について紹介し、同地域の食料システムの変革に貢献することを目的としています。その第4号は、関心が高まるバイオ炭を取り上げ、近年の研究成果を解説するとともに、実践に役立つ技術情報を伝えています。今回の改訂では、バイオ炭による炭素貯留量を簡易ながら正確に推定する手法について、その適用対象となるバイオマスの広がりを反映させています。またバイオ炭を対象とする認証や炭素クレジットについて、最新の国際的動向が加筆されています。レポートの概要は以下です。
バイオ炭はバイオマスを原料とし、無酸素または制御した低酸素の環境において、350℃を超える温度での熱分解によって得られます。鉱質土壌への施用では、土壌環境を改善し、酸性土壌のpHを適度に上昇させます。また炭素を土壌中に固定することから、大気中の二酸化炭素の除去技術の一つとも考えられています。土壌環境改善はバイオ炭の構造に起因し、多孔質構造が土壌微生物の棲息場所となり、栄養分を保持し、栄養循環と土壌生態系の維持に重要な役割を果たしています。原料や熱分解の方法によって特性は異なり、木質系バイオ炭は炭素含有量が多く、畜糞系バイオ炭は植物が利用可能な栄養成分を含む傾向があります。地域で利用できるバイオマスを明らかにし、適切な熱分解システムを選択し、得られたバイオ炭の特性を生かした活用が望まれます。
バイオ炭が発揮する効果には大気中の二酸化炭素の除去による気候変動緩和といった公益的な側面があるため、個人による費用負担を期待することは難しいと考えられます。そこで導入促進には、公益に貢献する全ての関係者が利益を得られる政策的枠組みとインセンティブの付与が効果的です。日本ではこの分野での取り組みが多く、補助金やクレジット、そしてバイオ炭施用農地で栽培された野菜のエコブランディングなどの事例が見られます。このようなインセンティブを公平かつ合理的に付与するには、バイオ炭による炭素貯留量の推計が必要です。従来の元素分析による推計は、多くの時間と費用を要しましたが、最近では日本産業規格に準拠した近似分析手法が開発され、短時間かつ少ない費用での推計が可能になってきています。この分析手法は「工業分析に基づくバイオ炭を用いた農地土壌炭素貯留量の簡易で正確な推定手法」として、「アジアモンスーン地域の生産力向上と持続性の両立に資する技術カタログ」に収録されています。
農地での長期にわたるバイオ炭利用の効果については、さらなる研究が必要とされているものの、既存研究のメタ解析の結果は農業へのポジティブな傾向を明確に示しています。バイオ炭の活用が持続的農業と気候変動緩和に貢献することが期待されます。
レポートシリーズ https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia/report
みどりの食料システム国際情報センター https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia
(文責:国際農研 社会科学領域 小林慎太郎)