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1448.グリーンアジアレポートシリーズ「低投入型稲作栽培のためのひこばえ」を公表

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1448.グリーンアジアレポートシリーズ「低投入型稲作栽培のためのひこばえ」を公表

 

「低投入型稲作栽培のためのひこばえ」に関するレポートが公表されました。このシリーズは、アジアモンスーン地域の行政官、研究者、普及担当、生産者、民間セクターを含む多様な関係者の参考となるよう、アジアモンスーン地域で共有できる基盤的農業技術(scalable technologies)について紹介し、同地域の食料システムの変革に貢献することを目的としています。第5号では、アジアモンスーン地域の労働力不足や環境問題に配慮した稲作技術として「ひこばえ栽培」の有用性を取り上げます。

アジアモンスーン地域の農村では、高齢化や農業労働力の減少、さらには気候変動や環境悪化による収量および品質の低下が深刻化しています。こうした状況下で、限られた資源や労働力を活用しつつ稲作生産を維持し、環境負荷を軽減する技術が求められています。ひこばえ栽培は、稲刈り後の株元から再び生える新芽(ひこばえ)を利用することで、種まきや移植といった作業を省略し、労働力と資源投入の削減を目指す手法です。ひこばえを用いた水稲再生二期作は、気候や社会的条件が変化する中でも、持続的かつ効率的な稲作を実現する一つの選択肢として期待されています。

水稲作では、育苗や田植えなど作付け開始時期に労働負担が集中するため、従来の水稲二期作では労働力の確保やコスト増加が農業経営を圧迫することがあります。一方、ひこばえ栽培では、代かきや苗立て作業が不要なため、作業負担と生産コストの削減が可能です。また、収穫後の株を再利用することで栽培期間が短縮され、肥料や水の使用量が削減できるため、環境負荷の軽減や温室効果ガス排出の抑制にも寄与します。しかし、この技術はすべての地域や条件で効果を発揮するわけではなく、気候、品種、栽培管理の違いによっては収量低下などの課題も生じる可能性があります。それでも、ひこばえを用いた再生二期作は、従来の二期作と比較して労働生産性の向上、環境負荷の低減、コスト削減、さらには水資源の節約や温室効果ガス排出削減といった点で優れています。

本レポートでは、ひこばえ栽培の特徴や有用性、栽培技術の重要なポイントについて詳述するとともに、普及促進のための取り組みや今後の研究開発の方向性についても考察しています。ひこばえ栽培は決して万能な解決策ではありませんが、特定の条件や環境に適応することで、農家経営の改善や持続可能な稲作体系の構築に寄与する有望な技術となる可能性があります。本レポートが、現場の関係者が技術導入の是非を検討するための基礎資料となり、アジアモンスーン地域における水稲農業の発展に寄与することを期待しています。

 

(参考文献)

レポートシリーズ https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia/report 
みどりの食料システム国際情報センター https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia 
(文責:国際農研 農村開発領域 白木秀太郎)

 

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