Pick Up
1458.グリーンアジアレポートシリーズ第6号、小型在来魚種の保護と持続的利用に関する英文レポートを公開を公表
1458.グリーンアジアレポートシリーズ第6号、小型在来魚種の保護と持続的利用に関する英文レポートを公開を公表
グリーンアジアレポートシリーズにおいて、小型在来魚種の保護と持続的利用に関する英文レポートが公開されました。本シリーズは、アジアモンスーン地域の行政官、研究者、普及関係者、生産者、民間セクターなど多様な関係者の参考となるよう、同地域で共有可能な基盤農業技術(scalable technologies)について紹介し、食料システムの変革に貢献することを目的としています。第6号は、”Sustainable Use of Small Indigenous Fish Species for Nutritional and Livelihood Improvement in Inland Rural Areas of Indochina”というタイトルで、安価で良質な栄養源として期待される小型在来魚種を対象に、その資源保護と養殖のモデルを解説しています。その概要は以下のとおりです。
東南アジアは経済成長を実現してきましたが、栄養不足は依然として重要な懸念事項です。農村を中心とする一部の地域では、タンパク質や脂質、ミネラルやビタミンが不足しており、子供の発育不全や女性の貧血が高い頻度で見られます。これらの不足する栄養素を補うため、東南アジアの国々では魚の養殖が推進されてきましたが、養殖場から逃げた外来魚の定着が、地域の生物多様性と生態系に対する脅威となっています。また商業的な養殖には多額の投資が必要で、所得の低い農村部での導入は容易ではありません。地域の生態系を保全しつつ、農村における栄養供給を実現するには、小型の在来魚種の活用が求められます。
タイやラオスのダム湖では、地域の重要な食料である在来魚の減少が報告されています。その背景には漁業技術の進歩による漁獲圧力の増大があり、漁獲努力量への制限や保護区の設定といった対策が求められます。漁業資源を持続的に利用するには、漁獲を制限するだけでなく、食品ロスを減らし、漁獲物を有効に利用することも重要です。保冷施設が十分でない農村部においては、伝統的食品加工技術である発酵を活用することも有効です。特に近年は、発酵過程でのヒスタミン生成を抑制する塩分調整のプロトコルが確立されており、このような新しい食品加工技術の普及も効果的です。
小型在来魚種は養殖にも活用できます。ラオスにおける水田養殖の事例では、人為的に飼料を与えることなく魚が成長することが確認されています。加えて、コメが増収する事例も観察されています。また、ため池養殖の事例では、餌に要する費用を大きく超える販売収入が得られる事例も観察されています。これらのことから、小型在来魚種と地域環境を活用する養殖は、低所得の農家にも導入が可能で、良質な栄養と所得をもたらす可能性があるといえます。
養殖の際の人工飼料の主材料である魚粉は、近年価格が上昇する傾向にあり、水産養殖の課題となっています。魚粉に代わる飼料原料として、昆虫に期待が集まっています。東南アジアにも分布し、植物残渣を利用して増殖が可能なアメリカミズアブを養殖飼料のタンパク源として利用したところ、魚粉と遜色のない成長が確認されました。この利用法は「簡易に生産できるアメリカミズアブ幼虫をタンパク源として調製した餌」として、「アジアモンスーン地域の生産力向上と持続性の両立に資する技術カタログ」に収録されています。
小型在来魚種の資源保護と養殖への活用は、東南アジア内陸部における農家にとって実行が可能であり、地域の生態系保全と栄養不足改善を両立し得る実践的な解決策となりえます。
レポートシリーズ https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia/report
みどりの食料システム国際情報センター https://www.jircas.go.jp/ja/greenasia
(文責:国際農研 社会科学領域 小林慎太郎)