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1423. 世界は「水破産の時代」に突入

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1423. 世界は「水破産の時代」に突入

 

慢性的な地下水枯渇、水の過剰配分、土地と土壌の劣化、森林破壊、そして汚染が、地球温暖化によってさらに深刻化する中、国連の報告書は、「世界水破綻の時代 “Era of Global Water Bankruptcy”」の幕開けを宣言し、世界の水資源管理計画の抜本的な見直しを訴えました。

報告書は、多くの地域における今日の現実は、自然水資本の不可逆的な喪失と、過去の基準値への回復不能を特徴としており、「水ストレス」や「水危機」といった馴染み深い言葉ではとらえきれないと述べています。経済的な観点から見ると、多くの社会は河川、土壌、積雪から得られる年間の再生可能な水「収入」を過剰に支出しているだけでなく、帯水層、氷河、湿地、その他の自然貯水池における長期的な「貯蓄」を枯渇させています。その結果、帯水層の圧縮、デルタ地帯や沿岸都市の地盤沈下、湖沼や湿地の消失、そして生物多様性の不可逆的な喪失がますます深刻化しています。

 

報告書は、水資源管理誌に関する査読論文に基づき、「水破産 water bankruptcy」を正式に次のように定義しています。

  • 再生可能な流入量と安全な枯渇レベルと比較して、表層水および地下水からの過剰取水が持続的に続くこと。
  • その結果生じる、水に関連する自然資本の不可逆的または法外なコストを伴う損失が生じること。

すべての流域や国が水破産に陥っているわけではないものの、世界中で相当な数の重要な水システムがこれらの限界を超えています。これらのシステムは貿易、移住、気候のフィードバック、そして地政学的依存関係を通じて相互に結びついており、世界のリスク環境は今や根本的に変化しています。

 

報告書はまた、水資源の置かれる状況・トレンドについて、厳しい統計を提示しています。以下、幾つか紹介します。

  • 50%:1990年代初頭以降、水量減少を経験した世界の湖の割合(人類の25%がこれらの湖に生活を依存)
  • 50%:世界的に地下水に依存する生活用水の割合
  • 40%以上:常に取水されている帯水層に依存する灌漑水の割合
  • 70%:長期的に減少傾向にある主要な帯水層の割合
  • 4億1000万ヘクタール:過去50年間で消失した自然湿地帯の面積(欧州連合全体にほぼ匹敵する面積)
  • 30%以上:1970年以降、世界的に失われた氷河。数十年内に、低緯度および中緯度の山脈全体で、氷河として機能する地域が失われるとの予想
  • 1億ヘクタール:塩害被害を受けた農地
  • 1億7000万ヘクタール:高度または極めて高い水ストレスにさらされている灌漑農地(フランス、スペイン、ドイツ、イタリアの4か国を合わせた面積に相当)
  • 30億:総貯水量が減少または不安定な地域に住む人々。世界の食料の50%以上が、これらのストレス下にある地域で生産
  • 18億人:2022~2023年に干ばつ状況下で暮らした人々
  • 3,070億米ドル:世界の干ばつによる年間損失

 

水破産は単なる水文学的問題ではなく、深刻な社会的・政治的影響を伴う問題です。報告書は、先送りをするほど水問題は深刻化していく中、水破産の現実を認めることで、人々、経済、そして生態系を守るために、政府・多国間協力で正しい選択をすることができると強調しています。

 

(参考文献)
UNU-INWEH Report: Madani, K. (2026). Global Water Bankruptcy: Living Beyond Our Hydrological Means in the Post-Crisis Era. United Nations University Institute for Water, Environment and Health (UNU-INWEH), Richmond Hill, Ontario, Canada. https://unu.edu/inweh/collection/global-water-bankruptcy


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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