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1379. 2025年排出ギャップ
1379. 2025年排出ギャップ
国連環境計画が発表した「2025年版排出ギャップ報告書(Emission Gap Report 2025)」によると、今世紀における地球温暖化は、国別決定貢献(NDC)の完全実施のもとで2.3~2.5℃、現行政策のもとで2.8℃に達すると予測されます。
昨年の報告書では、それぞれ2.6~2.8℃、3.1℃と予測されていましましたが、この改善のうち0.1℃は方法論の見直しによるもので、米国のパリ協定離脱によりさらに0.1℃の削減効果が打ち消されるため、新たなNDC自体はほとんど変化をもたらしていないことになります。
パリ協定の2℃目標と1.5℃目標の達成には、2035年までに年間排出量をそれぞれ2019年比で35%と55%削減する必要があります。必要な削減規模、達成までの期間の短さ、そして厳しい政治情勢を考えると、1.5℃を超える可能性が高く、その可能性は今後10年以内に高まると予想されます。
報告書は、気候変動リスクと被害を最小限に抑え、2100年までに気温を1.5℃に抑えるという目標達成の可能性を維持するには、温室効果ガス排出量をより迅速かつ大幅に削減することで、このオーバーシュートを抑制する必要があると指摘しています。ほんのわずかな気温上昇でも回避できれば、人々や生態系への損失が軽減され、コストも削減され、2100年までに気温を1.5℃に抑えるための不確実な二酸化炭素除去技術への依存度も低下します。
10年前のパリ協定採択以来、気温上昇が3℃-3.5℃に達するとした予測からみれば、進展はみられており。大幅な排出削減を実現するために必要な低炭素技術は既に利用可能です。風力・太陽光発電の開発は急速に進み、導入コストが低下しています。これは、国際社会が望めば気候変動対策を加速できることを意味します。
しかし、より迅速な削減を実現するには、困難な地政学的環境を乗り越え、途上国への支援を大幅に増額し、国際的な金融構造を再構築する必要があります。
(参考文献)
UNEP. Emissions Gap Report 2025 https://www.unep.org/resources/emissions-gap-report-2025
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)