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1370. 2025年気候報告書:危機に瀕する地球

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1370. 2025年気候報告書:危機に瀕する地球

 

10月29日、BioScience誌にて、2025年気候報告書:危機に瀕する地球(The 2025 state of the climate report: a planet on the brink)が発表され、人為的な気候変動の影響が、もはや未来の脅威ではなく、今まさに現実のものとなっていることに警鐘を鳴らしました。

 

主なハイライト

  • 2024年は地球の平均表面温度の記録更新となり、気候変動の激化を示唆しています。
  • 温暖化は加速している可能性があり、その原因としては、エアロゾル冷却の減少、強力な雲のフィードバック、そして地球の暗化が考えられます。
  • 人間の活動が生態系のオーバーシュートを引き起こしています。人口、家畜、肉の消費量、国内総生産(GDP)はいずれも過去最高を記録しています。
  • 2024年には、化石燃料のエネルギー消費量が過去最高を記録し、石炭、石油、ガスのすべてがピークに達しました。太陽光と風力の合計消費量も過去最高を記録しましたが、化石燃料のエネルギー消費量の31分の1にとどまりました。
  • 2025年現在、大気中の二酸化炭素濃度は記録的な水準に達しており、エルニーニョ現象や激しい森林火災の影響で陸地の炭素吸収量が急激に減少したことが、この状況を悪化させていると考えられます。
  • 世界の火災による樹木被覆損失は過去最高を記録し、熱帯原生林の火災は2023年と比較して370%増加しました。これは、排出量の増加と生物多様性の喪失を加速させる要因となっています。
  • 海洋熱量は記録的な高さに達し、記録上最大のサンゴ白化現象を引き起こし、サンゴ礁面積の84%に影響を与えています。
  • 2025年現在、グリーンランドと南極の氷床量は記録的な低水準にあります。グリーンランドと西南極の氷床は臨界点を超えつつある可能性があり、地球規模で数メートルの海面上昇を招く可能性があります。
  • テキサス州の洪水で少なくとも135人が死亡し、カリフォルニア州の山火事だけでも2,500億ドルを超える被害額が発生し、2000年以降の気候変動に関連した災害による被害額は世界全体で18兆ドルを超えるなど、甚大な被害と甚大な損失を伴う災害が急増しました。
  • 気候変動は数千種の野生動物を危険にさらしており、3,500種以上が現在危険にさらされており、気候変動に関連した動物の個体数減少の新たな証拠も存在します。
  • 大西洋の南北循環は弱まりつつあり、大規模な気候変動の脅威となっています。
  • 気候変動はすでに水質と水資源に影響を与えており、農業生産性、持続可能な水管理を損ない、水をめぐる紛争のリスクを高めています。
  • 温暖化の加速、自己強化的なフィードバック、そして転換点により、危険な温室地球軌道への転帰が現実味を帯びてきている可能性があります。
  • 気候変動緩和戦略は費用対効果が高く、緊急に必要とされています。森林保護や再生可能エネルギーから植物性食品を多く含む食生活まで、大胆かつ迅速に行動すれば、温暖化を抑制することは依然として可能です。
  • 社会の転換点は急速な変化を促す可能性があります。たとえ小規模で持続的な非暴力運動であっても、社会規範や政策を変革し、政治的行き詰まりや生態系危機のさなかにあって、前進するための重要な道筋を浮き彫りにすることができます。
  • 個々の技術的アプローチを、より広範な社会変革、ガバナンス、政策、そして社会運動と結び付けるようなシステム変革が必要です。

 

(参考文献)
The 2025 state of the climate report: a planet on the brink, BioScience (2025). https://academic.oup.com/bioscience/advance-article/doi/10.1093/biosci/…;

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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