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1368. 持続的な水田稲作システムの可能性
1368. 持続的な水田稲作システムの可能性
昨日10月27日、東京一橋講堂にて、JIRCAS国際シンポジウム2025:アジアモンスーン地域における農林水産業技術の実装加速化 ―生産力向上と持続可能な食料システム構築に向けた進展と展望― が無事開催されました。ご参加の皆様、ありがとうございました。近日中にシンポジウムの成果を報告させていただきます。
シンポジウムで取り上げた国際農研のグリーンアジアプロジェクトでは、高温多湿、水田稲作を主体とした農業、中小規模の農業者の割合が高いといった我が国と共通の特徴を有するアジアモンスーン地域に着目し、温室効果ガス排出等の環境負荷削減と生産力の向上を両立する科学技術イノベーションの適用加速化のための連携を模索してきました。
水田土壌は、地球上で最も大きな湿地を構成していますが、人為的活動によって大きく改変されてきました。水田土壌では、水・土壌管理によって引き起こされる微生物を介した酸化還元サイクルのプロセスが土壌ミネラルと土壌有機物の動態を制御しているとされます。水田における収量を増加させながら温室効果ガス排出を同時に低減できる慣行は、各地域の気候・土壌条件等に左右され、未だ十分に定義されていません。また、温室効果ガス排出低減と生産性向上を両立できる技術が生産者に採択されるかどうかは、各現場の社会経済的・制度的条件にも依存します。グリーンアジアプロジェクトは、その成果として、アジアモンスーン地域での応用実証研究に基づくエビデンスを収集し、社会実装に必要な条件について情報発信することを目指しています。
一方、水田稲作における人為的な土壌・水管理によって引き起こされる酸化還元サイクルが、短期および長期的に特定の水田土壌を形成する生物地球科学プロセスについての知見は、依然として不足しているようです。水田土壌は、短期的には微生物代謝の影響を大きく受ける一方、長期的には、鉱物の風化と生成ならびに有機物と有機窒素の蓄積に制御されるようですが、持続的な水田稲作システムの構築に向けたエビデンスの蓄積が必要とされています。
以下、持続的でリジェネラティブな食料システムの在り方についてご提案を行っているパタゴニア日本支社様から、畑作システムと異なる、水田稲作システム固有の特徴とその日本における可能性を議論する、『リジェネラティブ・オーガニック カンファレンス』イベント開催のご案内です。
リジェネラティブ・オーガニック カンファレンス 2025
~水田稲作システムと日本における可能性~
日時 :2025年11月27日(木)13:00~17:00 (開場12:15。暫定)
主催:パタゴニア日本支社 後援:リジェネラティブ・オーガニック・アライアンス
特設サイト:https://info.patagonia.jp/events/1178/
(詳細は、特設サイトからお問い合わせください)
(参考文献)
Ingrid Kögel-Knabner, et al. Biogeochemistry of paddy soils, Geoderma, Volume 157, Issues 1–2,
2010, https://doi.org/10.1016/j.geoderma.2010.03.009
Ping Liao, et al, Identifying agronomic practices with higher yield and lower global warming potential in rice paddies: a global meta-analysis, Agriculture, Ecosystems & Environment, Volume 322, 2021, 107663, https://doi.org/10.1016/j.agee.2021.107663
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)