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1332. 食料貿易の水資源移転インパクト

1332. 食料貿易の水資源移転インパクト
国連大学(UNU- Institute for Water, Environment, and Health: INWEH)の新たな報告書によると、食料貿易を通じた仮想水移転は、世界人口の大多数にとり水不足を軽減する一方、特に低所得地域に住む数百万人の人々にとって水不足を深刻化させていることが示唆されました。
食料を輸入することで、各国は国内生産に必要な水を効果的に節約し、自国の水供給への圧力を軽減できます。対照的に、食料輸出は収入をもたらす一方で、限られた地域資源を枯渇させ、自国民が利用できる水が減少します。
世界全体としては、食料貿易に伴う仮想的な水移転の恩恵を受けていますが、その影響は国によって異なります。報告書は、中国北部、ヨーロッパ、北アフリカの一部といった地域は農業貿易から最も大きな恩恵を受けていますが、インドやパキスタンといった国、さらにはオーストラリア東部や米国中部の地域は、ほとんど、あるいは全く恩恵を受けておらず、場合によってはさらに深刻な水ストレスに直面している可能性を指摘しました。
報告書は、水不足の緩和は高所得層が主な受益者となる一方で、水不足の深刻化は低所得層が最も大きな打撃を受ける状況を指摘します。報告書は、政策策定において、水資源の全体的な利用可能性だけでなく、貿易の結果が低所得層にどのような影響を与えるかに焦点を当てる必要があることを強調し、低所得世帯への財政支援、水道料金の手頃な価格の維持、基本的なニーズの確保のための地域水インフラへの投資によって、不平等を軽減することを訴えます。なかでも、農業においては、点滴灌漑や水集約度の低い作物への転換により、生産における水効率を向上し、地域の水不足を緩和し、小規模農家を支援することが求められます。
(参考文献)
Qin, Y., Gu, W. AghaLouchak, A., Liu, Y., Madani, K., Ni, J. (2025). Water Inequity in Global Agricultural Trade. United Nations University Institute for Water, Environment, and Health (UNU-INWEH), Richmond Hill, Ontario, Canada, https://collections.unu.edu/eserv/UNU:10265/INWEH_Report_Water_In_EQ_Gl…
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)