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69. 新型コロナウイルス・パンデミック - 国連貿易開発会議(UNCTAD) :国際貿易と外国直接投資の収縮

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2020年6月、国連貿易開発会議 (UNCTAD)は、2020年、国際貿易が20%急降下する一方、外国直接投資が40%落ち込むとの見通しを示しました。

6月11日にUNCTADが公表した四半期報告書 (Global Trade Update) の最新データによると、商品貿易は今年の第一四半期に5%落ち込み、第二四半期には27%下落する見込みであり、2020年に20%の落ち込みが予測されています。ただし不確実性が大きく、最終的には、パンデミックの展開と政府による経済刺激政策の規模によるでしょう。コロナウイルスにより引き起こされた貿易低迷の影響を受けない国はありませんが、とりわけ途上国への打撃が大きいことが予測されています。今年の第一四半期の南南貿易の落ち込みは2%でしたが、4月には14%と急激に落ち込みました。途上国では、取引先市場での需要の落ち込みによって輸出が落ち込む一方、輸入の落ち込みは国内需要の落ち込みだけでなく、債務や外貨不足への懸念を反映した為替の影響も受けているようです。

4月に関する初期データは、南アジアと中東で40%の貿易の落ち込みを記録した一方、東アジアと太平洋地域では貿易の落ち込みは第一四半期・4月とも一桁にとどまり、何とか持ちこたえているようです。4月時点で中国は他の経済よりも上手く対応し、輸出は3%増加しました。しかし最新データでは回復は短期的であり、5月の輸入・輸出は8%ほど落ち込んでいます。

報告書によると、COVID-19の影響はセクターによって異なるようです。2020年第一四半期、繊維・アパレルの貿易は12%落ち込み、事務機器や自動車部門は8%下落する一方、これまでのところ激動を回避し得ているアグリフードセクターでは2%増加しました。4月データは、多くのセクターでさらに貿易が縮小することを示しており、とりわけエネルギー(-40%)、自動車(-50%)で顕著です。化学製品・機械・精密機器も10%以上下落しています。一方、事務機器は中国の輸出によって4月に盛り返しました。COVID-19によって、人工呼吸器・モニター・体温計・手指消毒剤・保護マスクなど、医療用品・機器への需要は増加しました。これらの国際貿易はパンデミック初期に収縮しましたが、2・3月に盛り返し、4月には倍増しました。

UNCTADはまた、6月16日に外国直接投資(FDI)に関する報告書を公表しました。2020年に40%と急激に落ち込み、2019年の1.54兆ドルから2005年来はじめて1兆ドルを割り込むことになります。2021年にも5-10%の落ち込みが予想され、回復は2020年まで期待できないとしています。FDIにとって、パンデミックは供給・需要・政策ショックであり、ロックダウンは既存の投資プロジェクトの遅延をもたらしています。大不況の予測の下で多国籍企業は新規プロジェクトを見直しており、政策により新規投資にもブレーキがかかるでしょう。

FDIの落ち込みにより途上国が最大の影響を被ると予測されます。2020年の投資フローの下落率は、アフリカで25-40%、アジア途上国で~45%、ラテンアメリカで半減、すると予測されています。世界FDIの殆どを占める世界上位5000の多国籍企業は、今年の収益が平均で40%落ち込むことを見込んでおり、産業によっては損失を計上するでしょう。低利益はFDIの50%以上を占める再投資収益に負の影響をもたらすと予測されています。

 

参考文献

UNCTAD. Global trade continues nosedive, UNCTAD forecasts 20% drop in 2020. 11 June 2020 https://unctad.org/en/pages/newsdetails.aspx?OriginalVersionID=2392

UNCTAD.  Global foreign direct investment projected to plunge 40% in 2020. 16 June 2020 https://unctad.org/en/pages/newsdetails.aspx?OriginalVersionID=2396

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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