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1268. レジリエンスは報われる

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1268. レジリエンスは報われる

 

世界中で、気候変動により深刻な災害が発生する可能性が大幅に高まっています。例えば、70年の人生の間に100年に1度の洪水に遭遇する確率は、1990年生まれの63%から2025年生まれの86%に上昇しています。この上昇は、産業革命以前の気候(1850~1900年)では「100年に1度」と考えられていた洪水が、1990年にはすでに約30%多く発生しており、現在の気候変動対策の誓約(2100年までに約2.6~3.0℃の気温上昇に相当)では2025年までに2.5倍以上の頻度で発生すると予測されていることとも整合的です。

国連防災機関(the United Nations Office for Disaster Risk Reduction (UNDRR))が発行した報告書「レジリエンスは報われる:未来のための資金調達と投資 The Global Assessment Report on Disaster Risk Reduction(GRA) 2025 ―Resilience Pays: Investing and Financing for Our Future」は、リスクの現実に合わせた投資を行うことで、債務の悪循環、保険適用の困難、そして人道支援ニーズの増大を打破できる方法を概説しています。

報告書は、保険会社が補償するにはリスクが高すぎるとみなされる地域の出現から、国家債務の増大、そして人道危機の再発に至るまで、災害コストの増大がすでに世界中でどのように影響を及ぼしているかを概説しています。過去20年間に記録された直接的な損失の95%以上は、「五大災害」である地震、洪水、暴風雨、干ばつ、熱波によるものでした。1970年から2000年の間、インフレ調整後の災害の直接的なコストは平均して年間700億ドルから800億ドルでしたが、2001年から2020年の間には、これらのコスト(そのほとんどは予防可能なものです)は2倍以上に増加し、年間1,800億ドルから2,000億ドルに達しました。

今日のグローバル化した世界においては、カリブ海における漁業と観光業を脅かす破壊的な藻類ブルーム、あるいはスウェイツ氷河の融解のような潜在的な転換点となる事象まで、複合的な災害事象が社会や生態系に大きな波及効果を及ぼしていますが、こうした災害の真のリスクは過小評価されてきました。報告書は、災害による直接的なコストが年間約2,020億ドルにまで増加している一方で、連鎖的なコストや生態系へのコストを考慮すると、災害の真のコストは2.3兆ドルを超えることを明らかにしました。こうしたコストとそれが生み出す債務の負担は、途上国に不均衡にのしかかっており、早急な対策を必要としています。

防災とレジリエンスへの体系的かつ大規模な投資は、こうした傾向を食い止めるだけでなく、反転させることも可能です。レジリエンス構築への投資は、食料安全保障の強化(SDG 2)、教育成果の向上(SDG 4)、気候変動の削減など、複数の持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支え、災害による経済損失の増大を食い止め、人道ニーズを軽減し、乏しい国際援助資源をより効果的に活用するたうえで役立ちます。

 

(参考文献)
United Nations Office for Disaster Risk Reduction (2025). Global Assessment Report on Disaster Risk 
Reduction 2025: Resilience Pays: Financing and Investing for our Future. Geneva. https://www.undrr.org/gar/gar2025

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

 

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