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968. 食料システムのレジリエンス分析

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968. 食料システムのレジリエンス分析

 

食のグローバル化が進んでいますが、自然災害・政治危機・感染症などの緊急事態により世界食料システムは寸断のリスクに常にさらされています。COVID-19パンデミックやロシア・ウクライナ危機は食料システムの脆弱性を浮き上がらせ、食料栄養安全保障の危機をもたらしました。こうしたショックは、食料システムのレジリエンス(強靭性)を見直す教訓となり、今後気候変動ショックの頻度が増えていく予想の中、適切な対応についても指針を与えてくれるでしょう。

Global Food Security誌で紹介された食料システムのレジリエンス(food systems resilience :FSR)に関するシステマティックレビュー論文の内容を紹介します。

もともと生態学で使われてきた「レジリエンス」という用語は、食料システムが長期的な機能を損ねないようショックに適応・対応する能力といった意味合いで使われてきました。しかし世界・地域的なショックとその影響を受け、新たな挑戦に対するレジリエンスを構築するための政策提言を導くことができるよう、FSR概念も常に進化し、多くの国際開発機関などもレジリエンスを評価するFSR概念について独自の提案をしてきます。こうした背景には、食料システムのレジリエンス・脆弱性に対する開発活動の効果をモニタリングし評価する統合的な枠組みを整備する意図があるようです。こうした食料システム研究のトレンドをまとめたレビューはこれまでもありましたが、空間的に精密なレベル(コミュニティや世帯)での分析に欠けており、FSRのダイナミックな課題について十分な分析はされてきませんでした。

COVID-19パンデミックのような大規模なショックに対し、FSRの概念は、国レベルのみならず、コミュニティによるレジリエンスの維持を反映できる必要があります。実際に、パンデミックは、ロックダウンや社会移動規制によるロジスティクスの障壁によって、食料システムにおいても、(国レベルのみならず、コミュニティやロジスティクスなどの)より詳細な粒度の高いレベル(at more granular levels)で攪乱が生じた状況に注目する機会を与えました。COVID-19パンデミック後のFSR分析において導入された分析指標には、包括的な食料流通チャネル、保険政策の普及度、食料支援システム、食料価格の変動、労働、等が含まれます。

論文著者らは、食料システムは全てのレベルで強靭であるべきとし、FSR概念もそれに応じて精密なレベルでのインパクトを測定できる指標を備えることで、国レベルでの強靭性強化に向けたゴール設定が可能になります。こうした情報の収集と分析が、食料システムのレジリエンス構築に向けた資源配分と効果的な政策意思決定を可能にするでしょう。


(参考文献)
Ujjwal KC, et al. 2024. A systematic review of the evolution of food system resilience assessment,
Global Food Security, Volume 40, 2024, 100744, https://doi.org/10.1016/j.gfs.2024.100744

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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