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1193. 持続的農業におけるマメ科作物の重要性

1193. 持続的農業におけるマメ科作物の重要性
2月10日は世界マメの日(World Pulses Day)です。国際マメ年 (International Year of Pulses) 2016年にNature Plantsで発表された論説が、持続的農業におけるマメ科作物の重要性についてまとめていました。未だに重要な議論ですので、内容を紹介したいと思います。
食料と栄養の安全保障を確保するには、第2の「緑の革命」を必要としていますが、同時に我々は地球規模の気候変動・環境危機にも直面しています。農業における窒素肥料の大部分は穀物生産に向けられていますが、施用された窒素のうち作物に利用されるのは 30~50% に過ぎず、過剰な窒素施肥は気候変動と生物多様性に悪影響を及ぼします。マメ科植物と根粒菌の共生は、持続可能な農業、作物とシステムの多様性、肥料使用量の削減による一次生産の強化など、非常に大きな可能性を秘めています。ただし、マメ科作物の窒素固定を活かすための研究開発は十分行われているとは言えず、この分野への投資が必要です。
また、豆類を多く含む食事は、健康上の利点だけでなく、動物性タンパク質生産に伴うカーボンフットプリント削減にもつながります。一方、マメ科作物は、世界的需要の増加にもかかわらず、栽培面積の拡大と生産性の向上の点で穀類に遅れをとっています。マメ科作物の収穫量の大きな変動に加え、収量の高い穀物作物との競争によりマメ科作物の価格が不安定なことが一因であると考えられます。特に開発途上国では、穀物に対しては価格支持政策が存在することが多いのに対し、マメ科作物には未開発の遺伝的改良の大きな可能性にもかかわらず、収量向上に向けた育種と栽培技術に対する研究投資は十分ではありませんでした。
現在、一握りの主要穀物作物に過度に依存していることは、農業的・生態学的・栄養学的および経済的なリスクを伴います。特に開発途上国では、世界的需要の増加にもかかわらず、生産が停滞または減少傾向にあるため、現在および将来の食料安全保障が脅かされています。
マメ科作物の生産と消費の増加による潜在的な社会経済的利益は莫大です。マメ科作物が競争上の優位性を獲得するには、農家にとっての収益性が主要穀物の収益性を上回る必要があります。開発途上国の資源に乏しい農家によるマメ科作物生産技術の採用を早めるには、これまで以上に農家参加型の適応型研究および開発アプローチを大規模に展開する必要があります。
(参考文献)
Foyer, C., Lam, HM., Nguyen, H. et al. Neglecting legumes has compromised human health and sustainable food production. Nature Plants 2, 16112 (2016). https://doi.org/10.1038/nplants.2016.112
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)