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1131. JIRCAS国際シンポジウム2024
1131. JIRCAS国際シンポジウム2024
2023年7月、国連は、地球温暖化(global warming)の時代はおわり、地球沸騰化(global boiling)時代の到来の兆候であると表現しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年から2023年にかけて公表したIPCC第6次評価報告書によると、気候変動により、干ばつ、集中豪雨などの異常気象の発生頻度が高くなることが予想されています。こうした気候変動関連災害による損失と損害の25%が農業関連であり、特に貧困および飢餓人口を多く抱えるグローバルサウスでの気候変動による脆弱度は大きいです。同時に、気温・季節パターンのシフトは中緯度地域の穀倉地帯にも影響を与えることで、世界食料安全保障が脅かされています。食料システムの強靭性強化のためには、気候変動適応・緩和の緊急対応が求められています。
人類は農業を開始して以来、食用に活用できる植物を選抜し栽培化してきました。植物は自ら移動できないため、その土地の季節サイクルに応じて発芽、開花、結実し、環境変化に対するレジリエンスを発達させてきました。対して、近代的育種においては、様々な環境に適用可能で、かつ化学肥料や農薬使用により高収量を実現できる品種の選抜が行われてきました。その結果として食料増産が実現する一方、モノカルチャー的生産の展開とともに、栄養に富み環境変化に適応可能な遺伝資源の多様性が喪失していきます。今日の食料システムは、新たに発現し続ける生物・非生物学的なストレスに脆弱で、化学肥料や農薬への依存度を強める悪循環が起きています。地球沸騰化時代において強靭な食料システムを構築するには、近代的育種・生産体制の展開の中で失われてきた栄養に富む多様な遺伝資源を保全・回復し、作物が本来有している生物・非生物学的ストレス耐性を解明し、かつ育種・品種開発に活用していく国際的な仕組みづくりが必要です。
その打開策の一つとして、気候変動に対してレジリエントな食用作物遺伝資源や、栄養に富みつつも無視され十分に活用されてこなかった植物種(Neglected and Underutilized Species:NUS)などの活用が期待されています。もう一方で、熱帯化する世界に向けた育種のためには、多様な遺伝資源を保全し、育種・品種開発へ活用できるシステムが必要ですが、同時に生物多様性保全や品種の権利・生物多様性条約(ABS)との関係にも留意する必要があります。
国際農研では、主要作物のイネ、ダイズ、低利用作物のキヌアを主な対象として、劣悪な環境など、様々な外的攪乱に強いレジリエントな作物を作出または生産するために必要な技術の開発や、熱帯性作物の持続的生産に向けた遺伝資源の情報整備と利用促進技術の開発および国内外との連携強化に取り組んでいます。本シンポジウムは、地球沸騰化時代に強靭で栄養に富んだ食料システム構築を実現するにあたり、遺伝資源の多様性と可能性、多様性を利用していくための制度整備の機会と課題を考えます。
JIRCAS国際シンポジウム2024
地球沸騰化時代におけるレジリエント遺伝資源の機会と課題
開催日 2024年11月22日(金) 13:30~17:30 (13:00受付開始)
場所 ハイブリッド(国連大学ウ・タント国際会議場およびオンライン)
特設サイト https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2024/e20241122_jircas
(文責:JIRCAS国際シンポジウム2024 実行委員会)