Pick Up

994. 人為的な温室効果ガス大気濃度が2023年も引き続き上昇傾向

関連プログラム
情報


994.  人為的な温室効果ガス大気濃度が2023年も引き続き上昇傾向

 

アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、2023年の人為的な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)・メタン(CH4)・亜酸化窒素(N2O)の大気濃度が、近年観察されてきた異常な増加率ほどではないにしても、引き続き上昇傾向を示したことを報告しました。

大気中のCO2濃度は、2023年の12か月平均で419.3 ppmと、前年比で 2.8 ppm上昇、過去65年間の観測史上において12年間連続で年間2ppm以上の上昇記録を更新したことになります。 大気中のCO2濃度は、今や産業革命以前の水準に比べて50%以上高い値となっています。2023年の増加は過去10年間で3番目に高い値で、NOAA研究者は、この背景に、化石燃料燃焼による排出が続いていることに加え、ラニーニャ現象からエルニーニョ現象の移行に伴う森林火災増加による排出が重なったことが考えられると指摘します。

大気中のメタンは2023年に1922.6 ppbに達しました。2023年のメタン増加分は10.9 ppbと、2020 年(15.2 ppb)・ 2021年(18 ppb) ・2022 年(13.2 ppb)の観測値よりは低いものの、2007年以降メタン上昇に転じて以来5番目に高い値です。大気中のメタンは、今や産業革命以前の水準に比べ、160%高くなっています。 

2023年、大気中の亜酸化窒素は1 ppb 上昇して 336.7 ppbに達し、2020年 (1.3 ppb) と 2021 年(1.3 ppb)の記録に匹敵します。近年における大気中の亜酸化窒素の上昇は、農業の拡大・集約化による窒素肥料使用と堆肥の増加が原因となっています。亜酸化窒素は、産業革命以前の水準(270 ppb)に比べて、25%高くなっています。

今のところ、気候変動への影響が最も大きいのが化石燃料燃焼による二酸化炭素の上昇であり、 人為的な二酸化炭素排出は、ハワイでの観測が始まった1960年代の年間109億トンから2023年の年間366億トンに増加しています。現在の大気中の二酸化炭素濃度は、現在よりも地球がずっと温暖で海水面も75フィート(22.8メートル)高く、現在の北極圏が森林に覆われていた430万年前の鮮新世時代(せんしんせい、Pliocene:地質時代の一つであり、約500万年前から約258万年前までの期間。)の水準に相当するそうです。二酸化炭素排出の半分は海洋と草地・森林の陸域生態系に吸収されますが、海洋による二酸化炭素や大気の熱の吸収は海洋酸性化を通じて海洋生態系に大きな影響を及ぼしています。

NOAAの研究は、大気中のメタンは1980年代に急増し、1990年代後半~2000年代初期に安定化したあと、2007年以降急速に上昇する傾向を示しています。NOAAやNASA研究者による研究は、2006-2021年のメタン上昇の85%が、家畜・農業・人および農業由来廃棄物・湿地そのほか水源の微生物による排出増加に起因することを示唆し、残りの上昇が化石燃料排出増加によるものです。研究者は、気候変動によって、湿地帯からのメタン排出が増加するというフィードバック・ループが起きている可能性について、分析しているそうです。


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

関連するページ