Pick Up

971. 肉を含むコメ

関連プログラム
情報

 

971. 肉を含むコメ


本日は、Matter誌に掲載された、動物細胞を組み込んだコメについての論文(Park et al. 2024)をご紹介します。

本研究では、米粒と、魚のゼラチンコーティング、および動物由来の細胞を組み合わることでハイブリッド食品「米ベースの肉」を製造しました。 昨今注目を集めている培養肉製品を作るための足場として、一般的な大豆やナッツベースの足場よりもアレルゲンの懸念が少ない新しい代替足場としてコメベースの技術を提案しています。

このハイブリッド食品を製造するにあたり、細胞培養プロセス中の細胞結合を促進し強化するために米粒を魚ゼラチンと食物酵素でコーティングしました。 牛の筋肉細胞(牛筋芽細胞)と脂肪細胞(脂肪組織由来幹細胞)をそれぞれ導入し、組織化された細胞構造を形成することで、2種類の「米ベースの肉」を製造しました。 著者らは、これらの新規食品は栄養価が高く実用的な食品としての可能性を秘めているとしています。

栄養プロファイルとしては、普通の米と比較して炭水化物・脂肪・タンパク質の含有量がわずかに増加しました。食感は、動物細胞の添加によってハイブリッド米のでんぷん鎖の伸びが減少するため、普通の米と比較して粘り気が少なく、もろくて硬いことがわかりました。匂い分析を行ったところ、さまざまなハイブリッド米粒(筋肉筋管と脂肪脂肪細胞)が、それぞれ牛肉とクリームまたはバターに通じる独特の匂いを持っていました。

本論文ではハイブリッド食品の製造に成功し、コメが細胞培養肉の増殖と分化のための足場として機能できることを実証しました。食品、足場、細胞が相互に利益をもたらすハイブリッド技術として、他の食品にも広く適用できるとしています。ただ、それがどうフードシステム変革に結び付くのかは曖昧なままです。

(参考文献)
Park, S., Lee, M., Jung, S., Lee, H., Choi, B., Choi, M., ... & Hong, J. (2024). Rice grains integrated with animal cells: A shortcut to a sustainable food system. Matter.https://doi.org/10.1016/j.matt.2024.01.015
Table (2024) Rice gains integrated with animal cells. https://tabledebates.org/research-library/rice-grains-integrated-animal… (2024年3月4日アクセス)

(関連するページ)
934. 未来の世界人口を養うためにhttps://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20240111
922. タンパク質転換 https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20231219
765. 培養肉はコーシャとして認められるか?https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20230425
307. EUのノベルフードとしてはじめて昆虫食販売が承認される https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210603
197. 培養肉の販売が世界で初めて承認されるhttps://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20201217

(* アイキャッチ写真はハイブリッド米ではありません)

(文責:情報広報室 白鳥佐紀子)

 

関連するページ