Pick Up

941. 5年連続で記録更新となった海洋の貯熱量

関連プログラム
情報

 

941. 5年連続で記録更新となった海洋の貯熱量

 

2023年、海洋の熱吸収量が過去最多を記録したことがNature誌で紹介されました。 

強いエルニーニョ現象の影響により、海面水温は 2023 年に過去最高を記録し、年間平均値は 2022 年より約 0.23 ℃高い値となりました。論説は、国際的な共同研究成果の論文を引用し、海洋温暖化が2019年以降毎年記録的な速度で進んでおり、その背景に人為起源の温室効果ガス排出量の増加があることを指摘しています。

論文の筆頭著者である中国科学院大気物理研究所(IAP)の海洋学者チェン・リージン氏によると、地球システムの余剰熱の90%以上が海洋に蓄積されており、大気中の温室効果ガスが増加し続ければ海洋も地球システムからのエネルギーを吸収し続け、海洋の貯熱量がさらに増していくとされています。同氏は、海洋貯熱量を気温や海面温度の変化と比較しても地球システムの自然変動からの影響を受けづらいことから、気候変動を的確に反映する指標であると言及しました。

研究はIAPと米国海洋大気局国立環境情報センター(NCEI)の2機関からの海洋貯熱量に関する異なるデータセットをそれぞれ分析し比較しました。分析の結果、どちらのデータセットにおいても海洋が年々一貫して温暖化し、貯熱量が増加していることがわかりました。2023年の海洋上部 2000メートルに蓄えられた熱エネルギーは同じく2022年度分と比較して大きく(計算方法の違いにより、IAP:15 ゼタジュール、NCEI:9ゼタジュール)増加しています。これを2022年の世界の総エネルギー消費量であった0.6ゼタジュールと比較しても海洋の貯熱量の膨大さが見受けられます。したがって海洋の熱吸収における小さな変化も地球環境に大きな影響をもたらしうることが想像つきます。

海面上昇の約50%は水温上昇による海洋の体積拡大に起因すること、急激な海洋温暖化は降雨・干ばつ・洪水を決定する地球規模気象パターンに影響を及ぼすことが分かっています。急速な海洋温暖化は異常気象現象の激化に繋がり、気候変動の転換点に近づいていく可能性に警鐘が鳴っています。

 

(参考文献)
Nature 625, 434-435 (2024) doi: https://doi.org/10.1038/d41586-024-00081-0

 

(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)


 

関連するページ