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753. 飼料需要を満たすソリューションズ

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753. 飼料需要を満たすソリューションズ

現代の食料システムにおいて、動物性食品とその飼料の生産・消費が増加しています。世界の食肉生産量は過去50年間で4倍に増加しており、家畜および飼料の生産・消費部門の動向が食料システムに与える影響について注視していく必要が高まっています。動物由来の食品生産は世界の温室効果ガス排出量の11%、淡水資源利用の12%、1961年~2011年における土地利用変化に65%寄与しています。

飼料生産おいて温室効果ガスの排出量が特に多いとされるのが次の過程における投入物のエネルギー使用によるものとされています。
①    投入財・生産及び加工に伴うエネルギー使用過程 
②    窒素投入の過程 (nitrogen inputs) 
③    耕作地拡大による土地利用変化の過程

 

上記を踏まえ、今回は、国際NGOである世界自然保護基金(WWF)が提案する“飼料需要を満たすソリューションズ”を紹介したいと思います。

 

責任ある飼料調達 Responsible sourcing
責任ある資料調達は、土地利用の変化を伴わず、したがって極めて重要なエコシステムにおける森林保護等による炭素貯留を可能にし、飼料に関する意思決定において環境インパクト評価の実施を伴います。

 

環境再生型農業Regenerative agriculture
地域農家や生産コミュニティにおける環境再生型農業の取り組みは、生物多様性や水資源の保護や土壌の健全性向上といった様々な環境利益をもたらし、作付けシステムの養分(炭素、窒素、リン、水)との関連を通じ、炭素貯留や温室効果ガス緩和の両面において効果が期待できます。

 

循環型の飼料材料 Circular Ingredients 
循環型の飼料材料は、既に利用可能な’ニッチ’で革新的、かつ栄養価が高く健康面での機能性を持つような代替材料を利活用することで、最終処分場および作物生産のための土地需要の圧力を緩和することが期待されます。代替飼料の質および安全基準を満たしながら、経済的に採算のとれる代替飼料のインパクトと規模の評価実施を推進するうえで、リーダーシップが必要となります。

 

給餌体系におけるイノベーションFeeding Innovations
給餌体系におけるイノベーションは、家畜飼育の効率性と健康を改善、および堆肥及び消化管内発酵による温室効果ガス排出が少ない餌の開発や飼育方法の改善を通じ、家畜生産からの環境フットプリントの削減を目指します。飼料の調合、材料開発、生産設備、製造過程、さらには新たなビジネスモデルの確立におけるイノベーションを起こすことで、生産慣行の変容を引き出すインセンティブが生まれます。

 

報告書は、上記の解決策によって企業も国も気候変動対策にコミットし、気候レジリエンス力が強化できることが期待されるとしています。

気温上昇を1.5℃に抑える世界目標を追求するうえで、飼料セクターは、異常気象と水不足の脅威に晒されながらも、土地転換の抑制、炭素貯蔵力の強化、排出削減を推進していくことが求められています。


(参考文献)
WWF Solutions to Meet the Need for Feed 
https://www.worldwildlife.org/publications/solutions-to-meet-the-need-f…


(文責:情報プログラム トモルソロンゴ、飯山みゆき)
 

 

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