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122. CIFOR: 2050年に90億人の食料安全保障を満たすために  ― 森林へのインパクトは?

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国際林業研究センター (CIFOR) 研究者らは、Global Environmental Change誌に論文「2050年に90億人の食料安全保障を満たすためにー森林へのインパクトは?Meeting the food security challenge for nine billion people in 2050: What impact on forests?  」を公表しました。

1850年から2015年にかけて、食料需要増加に伴い、世界の耕作地面積は111%、牧草地面積は59%拡大する一方、森林ランドスケープ面積は17%減少しました。今日のフードシステムは、小麦・メイズ・コメといった主食作物の大量生産によって特徴づけられ、人類に対し様々な栄養を供給する多様化された生産システムからは程遠い状況にあります。人類への食料供給を至上とする分析では、農地拡大の森林への影響に関する十分な考察は行われてきませんでした。

国連によると世界人口は現在の78億人から2050年までに97億人に膨れ上がると予測されています。本研究は、世界的な農業森林土地利用モデルのレビューを行い、人口増に伴う食料需要の増大がもたらす森林面積への影響予測について整理しました。63モデルの分析結果、37モデルが2050年までに耕地拡大と世界的な森林・草地面積の減少を予測しています。対照的に、20のシナリオでは、2000万~28億ヘクタールの森林面積増加が予測されました。

森林破壊の回避は、土壌侵食や温室効果ガス排出を抑制し、炭素隔離や気温上昇の抑制に貢献します。炭素税、植林、森林破壊規制、作物生産性向上、フードロスの削減、カロリー過剰な食生活の抑制、等の措置を講じることで、農地拡大に対する森林保全と気候変動緩和双方に貢献することが期待されます。

 

参考文献

Bahar, N.H.A.; Lo, M.; Sanjaya, M.; Van Vianen, J.; Alexander, P.; Ickowitz, A.; Sunderland, T.C.H. Meeting the food security challenge for nine billion people in 2050: What impact on forests?  Global Environmental Change Volume 62, May 2020, 102056 https://doi.org/10.1016/j.gloenvcha.2020.102056

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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